全国町村会

大宮産業

法政大学教授 岡崎 昌之(第2791号・平成24年3月5日)

ガソリンスタンドの撤退が問題となっている。エコカーの普及やセルフスタンドの増加による価格競争の激化で経営難におちいる店も多い。また消防法の改正によって老朽化したタンクの修理や更新に、多額な費用が掛かることなどが背景にある。過疎化が進む農山村だけでなく、大都市でも同様の傾向だ。とくに農山村、離島においては、地域内にガソリンスタンドが3か所以下という“ガソリンスタンド過疎地”も、全国で200市町村を超える。車への給油に数10キロかかるケースも少なくない。冬期間の暖房用の灯油、除雪機械や農機具用の軽油などの入手に高齢者は苦労する。

高知県四万十市旧西土佐村大宮地区もそうした地域のひとつだ。四万十川支流の目黒川沿いに、大宮上、中、下と3集落が連なり、もう隣の町は愛媛県松野町だ。平成17年に合併した旧中村市の中心部にある市役所へは約50キロ、旧西土佐村中心部へも20キロという山中にある穏やかな盆地状の集落だ。昭和50年には148世帯、528人の大宮地区は、平成23年には133世帯、294人、高齢化率47%となった。まさに集落存立の危機となった。

そんな時にもたらされたのが、ミニスーパーとガソリンスタンドも経営していたJA大宮出張所廃止の知らせだった。高齢者の買い物にも困る、農機具の燃料、資材も買えない、地区として維持できるのかという不安が一気に広まった。JA存続運動もしたが、結局、廃止が決定。

そこで住民は結束し、自らが地域を守る仕組みを模索した結果、住民自身で住民のための株式会社をつくることとなった。約8割の108世帯が出資金700万円を出し、平成18年、株式会社大宮産業が誕生。JA施設の譲渡を受け、店舗と給油所を引き継いだ。売上額も年間約6千万円で、6期連続の黒字である。平成23年度は国の実証事業も受け、ミニローリーによる灯油の宅配や、早朝夜間の営業時間延長、店舗ではポスレジとポイントカードの導入など、意欲的に取り組んでいる。

灯油の宅配時に、日用品の宅配サービスと同時に高齢者の見守りをしたり、評判のいい大宮米のブランド化、都市住民や若者との交流など、厳しい農山村集落の中から、楽しい夢も語られるようになってきた。

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