全国町村会

“ふるさと納税”をこえて

法政大学教授 岡崎 昌之 (第2613号・平成19年9月3日)

いわゆる「ふるさと納税」をめぐって様々な議論が行き交っている。直接納税なのか、寄付に対する税額控除にするのかとやや形式にとらわれた議論から、税のシステムには馴染まない、貰えるものなら何でもいいと“ふるさと”側からの率直な感想などである。ちょうどそんな折、幅広い有志で立ち上げている「中山間フォーラム」が提言を発表した。「構造改革」のなかで、ふるさとという言葉さえ議論されることの少なかったここ数年、「ふるさと再生の志のある資金の移転システムとして機能させたい」という思いである。

直接的な資金の移転ではないが、東京都品川区と山梨県早川町との間で、ユニークな資産と知恵の相互移転が始まった。早川町は日本上流文化圏研究所の設置など、多様なまちづくりに取組んでいる。町のほぼ真ん中に位置する通称“丸山”は、所有者だった町民が町を離れ、早川町に寄付された。町はこれを1990年からふるさと交流協定を結んで多様な交流を続けている品川区に無償提供した。高さ100メートル、面積4万平方メートルの丸山は小さい平凡な山だが、品川区にとっては貴重な里山のようなもの。早速「マウントしながわ」と命名し、新しい協定も結び、里山クラブ員を募集し現地調査も行った。

今後は早川町や森林組合とも相談しながら、里山クラブ員を中心に計画案を作り、広葉樹の植林、登山道やカブトムシの里の整備、また間伐材を使った小屋作り、お年寄りや障がい者のためのリハビリコースとして散策道整備など、区民の夢は膨らむ。

こうしたことの背景に長年の交流協定、防災協定による住民レベルの相互交流がある。品川区からは毎年2,000人を越える区民が早川町を訪れる。品川区は早川町がイニシャティブをとる「日本ふるさと会議」にも加盟し、区役所近くの商店街に構成10市町村の特産品を販売する「品川座」の運営も支援している。

これまでともすれば、農山漁村地域は、困難があれば国に支援を求めてきた。国に頼ろうとする農山漁村地域に対して、都市側からそこを支援しようとする意識は芽生えにくかった。都市側にも農山漁村側にもそれぞれ足りる部分、足りない部分がある。互いが直接に補いつつ、協力していくことが欠かせないだろう。

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