全国町村会

まちづくり型ツーリズム

法政大学教授 岡崎 昌之 (第2561号・平成18年5月29日)

フランス、スイス、イタリア、スペインなどに象徴されるように、観光は先進国型の産業として確固とした位置を占めるようになってきた。また最近の状況は、これらヨーロッパの国々においても、これまでのような大都市や大規模観光施設への観光だけでなくなった。それに加えて農山村や地方都市の豊かな自然環境や地域文化にふれるといった観光へと、訪れる人々の関心や受け入れ側の施策や活動内容が変化してきた。

あるカナダ東部の観光エージェン トは「これまでと違う視点で世界を見る」をキーワードに、サイクリングや徒歩、船でのツアーを専門にしている。このエージェントが今年の秋に日本で実施するサイクリングツアーは能登半島を舞台にしている。カナダの人たちが自分のサイクリング車を能登に持ち込み、“絵のように美しく”“静かで穏やか”な能登半島を巡るという。何世紀もの伝統を持つ酒蔵や輪島漆器も行程に入っている。

こうした傾向は日本でも起きつつある。いわゆる観光地やテーマパークの喧騒を避け、農山村や漁村をゆっくりと訪れ、地元の人たちと言葉を交わし、地域文化に触れたいという人は急増している。多くの人々の行動は、従来の観光という言葉では包摂できない広がりを持つようになってきた。観光からツーリズムへと言葉も変ってきた。

観光地も変化への模索をしている。大分県由布院温泉は古くから生活観光地を標榜してきた。380万人という途方もない入込み客数に疑問を持ち、「目に見える広さの中」で「顔の見える人たち」が腕を組み「世の中の人を癒す」原点(中谷健太郎氏)に戻ろうとしている。一人も観光客など来なかった愛媛県内子町では、町並保存や村並保存で地元の人たちの誇りと暮らしの拠点を築くまちづくりで、多くの人々の関心を呼び70万人が訪れるようになった。

観光地がまちづくりへ展開し、まちづくりがツーリズムへ拡大しようとしている。磨いたまちに人は来る。まちづくり型ツーリズムが本格的に検討されなければならない。

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