全国町村会

住民が構想する自治の姿

法政大学教授 岡崎 昌之 (第2480号・平成16年5月17日)

中国地方の山間地では、丘のような小さい山の合間に、小集落が点在している。広島県内を瀬戸内側から日本海側に向けて北上すると、島根県境に近づくにつれ、民家の屋根は石州瓦の落ち着いた緋色が主流となってくる。旧高宮町の川根地区はそんな中国山地の集落のおもむきを美しく具現化した地区のひとつだ。

昭和の合併時に1,700人だった地区の人口は、現在264戸、646人と減少し、高齢化率は65%にもなる。しかし1972年の集中豪雨災害、1988年の中学校の統合による廃校など、地区存立の危機を乗り越えてきた住民の拠り所は、水害の直前に設立された「川根振興協議会」であった。災害復旧から始まった会の活動は、「川根夢ロマン」として地区の将来を描き、中学校の廃校跡地に建てた宿泊研修施設「エコミュージアム川根」を活動拠点として得た。

地区の人たちは行政に対して、要求だけでなく提案することを原則とし、町長や職員と協働した。薬師集落で始まったほたる祭は、子供達に河川に関わる環境教育の場や農家庭先味めぐりと称した特産品や食品の販売にもつなげた。営農集団「FF21」は高齢者世帯の農地を地元建設会社が委託耕作をし農地を存続させる。災害復旧で建設された巨大な堤防には景観上からラベンダーが植えられた。それを加工販売する高齢者グループ「ふぁみりーねこの手」の活動。農協が手を引いた後のガソリンスタンドとスーパーの経営。こうした実績を背景に、川根の取組みを積極的に発信しようと、外部からの参加者を募集して「川根地域づくり大学」を毎月開催している。

福祉、教育、産業と、地区が自立し存続していく道を、幅広く模索していく姿が見て取れる。二度の合併を乗り越えて、なお生き生きとまちづくりが展開される原点は、こうした住民自らが関わる自立的な組織と姿勢にある。

しかし合併後、支所となった元の役場は、市民生活課、業務管理課、地域振興課の3課となり、60人いた職員は20数人となった。新市では川根地区を1つのモデルに、これを市内32の住民自治組織に展開しようとしている。川根地区は新市の中心部からは約20キロと最も遠い地区となった。これから真の自立が模索される時となる。

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