全国町村会

げたばきヘルプ

法政大学教授 岡崎 昌之 (第2404号・平成14年7月8日)

千曲川は長野県栄村で最下流となり、県境を越え信濃川と名前を変えて日本海へ流れる。この栄村は秘境「秋山郷」をかかえ、全くの山深い村といった様相である。1年のうち140日は根雪があり、中心部でも毎年3メートルに近い積雪がある。昭和20年には、国内観測史上最高の7メートル85センチの記録がある。JR森宮野原駅の前には、見上げるような記録の標柱が立っている。除雪しなければならない道路は75キロにも及ぶ。

昭和30年の合併時には6,500人を数えたが、現在では2,700人となった。しかしそんな厳しい状況に打ちひしがれている村ではない。宿泊施設などの運営をする栄村振興公社は、米、野菜、雑貨類などを極力、村内から調達する姿勢を堅持している。農家の立場に立った村単小規模基盤整備事業は“平成の田なおし”とも呼ばれ、田のことを熟知した農家と職人技の重機オペレータが、田んぼで話し合いながら進める。農家負担が10アール当たり20万円を超えるなら取りやめる、など地域と農家の視点を重視する。

そんな栄村も、65歳以上人口が40%をこえるようになってきた。とくに秋山郷では50%にのぼる。そこで取り組まれたのが、在宅介護を近隣の住民の連携で支える「げたばきヘルプ体制」だ。山間地でも雪の中でも、下駄を履いてすぐ行ける距離にヘルパーを確保しておこうという趣旨だ。32集落ごとに数人のヘルパーを配置し、全体を八グループに分けワーキングチームを作り組織化していく。

介護保険の始まる前、1999年六月から村社会福祉協議会はホームヘルパー養成講座を実施した。いまでは2級・3級資格者合わせて、160人(うち、2級資格者42人)をこえるヘルパーが誕生している。村内の成人14.5人に1人がヘルパーということになる。秋山郷には介護ネットワークの拠点施設「高齢者生きがいセンター」も完成した。しかし村では、小規模町村では施設よりマンパワーで介護を進める、とあくまで栄村方式にこだわっている。住民自らがヘルパーの資格を取り、近隣で介護を担う動きが広がってきた。

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