全国町村会

土づくりセンターン

福井県立大学教授 岡崎 昌之 (第2322号・平成12年7月17日)

安全な食べ物を求めて有機農業を推進する。そうした取り組みを進めるために、地域内の有機物のリサイクルを考える。このような新しい農業への取り組みは、宮崎県綾町などで先進的に進んでいる。しかし実際に手がけるとなると、地域内の廃棄物の収拾、生産した農産物の販売など、多くの困難な課題にぶちあたる。だが地域にとっては生活に密着した重要な施策である。

栃木県高根沢町は宇都宮市に隣接しているが、米作中心の農村である。近年、外から移住してくる人も多く、人口は増えてきた。町内の市街地だけでも6,000戸を越えるようになってきた。ご多分に洩れずゴミ処理のための焼却施設が限界に達してしまった。油をかけて生ゴミを燃やす施設を増設するか、それとも生ゴミを分別収集し、リサイクルの道を探るか。高根沢では後者を選択した。

田んぼの真ん中に建設されたのが「高根沢町土づくりセンター」だ。これからの高根沢農業の中核施設になるよう、あえて目立つところに建てられた。高根沢では32戸の酪農家が1,000頭の乳牛を飼育している。他に3,000頭の肉牛もいる。この牛の糞尿と市街地の家庭から出る生ゴミ、それに水分調整用のもみ殻を混ぜ、有機質肥料を生産する。匂いが施設からもれない様に最新の技術が駆使されている。プラントの最終段階で、生産された肥料を手にとってみると、温かく、柔らかい無臭の土であった。これを農地に還元していくことにより、安全で美味しい米や春菊などの野菜類が出来てくる。ゴミ収集のことも含めて農政課が一連の施策を担当している。

町ではこうして作ったコシヒカリを学校給食に使用している。自分達で自信を持って作った農産物を子供達に与える。子供達も学習の一環として土づくりセンターを訪れる。家庭でセンターのことが話題になる。生ゴミをだす親も、分別と水切りに責任を持つようになってくる。土づくりセンターというごみ処理施設が地域の誇りになってきた。

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