全国町村会

地域を繋ぐ移住女子

明治大学教授 小田切 徳美(第2994号・平成29年3月27日)小田切 徳美

2月25日に東京で開催された全国町村会等による都市・農村共生社会創造シンポジウムを傍聴した。

「移住女子が拓く都市・農村共生社会」と名付けられたこのシンポには、3人の「移住女子」とそれを取材し続ける2人の女性ジャーナリスト、合計5人の女性が登壇した。会場の女性比率(約4割)を含めて、従来のこの種の催しの中では異色なものであった。しかも、5人の女性達の言葉、ひとつひとつが魅力的であった。それに引き込まれているうちに、4時間があっという間に終わったように感じたのは私だけではないだろう。

3人の女性移住者の発言で注目されたのは、「外の人と内の人の心を繋げる」(福島県天栄村・義元みかさん)、「地方と都市を繋ぐ人になる」(長野県飯島町・木村彩香さん)、「都会と田舎を上手に繋ぐキューピッドになる」(島根県奥出雲町・三成由美さん)と、いずれも自らの役割を「繋ぐ」ことにあるとした点である。

それは、彼女らがそこに住むことだけを目的としているのではなく、またその地域にかかわり、地域を魅力的なものとすることだけを目標とせず、さらに一段と高い、地方部と都市部を繋ぐことを自らのミッションとしているということであろう。

実は、移住者によるこの「繋ぐ」という志向性は、少し前から気になっていたことである。IターンかUターンかにかかわらず、移住者の中には都市と農村の交流の創出を自らの任務としているものがおり、その活動自体が新たな移住者を呼び込んでいる事例も多い。おそらく、都市と農村の両方を経験した者として、地域がそれぞれの良さを発揮し、お互いが支え合う、文字通り「共生」の実現を意識しているのであろう。そして、それは必ずしも女性だけに見られるものではない。

私たちは、彼らを「ソーシャル・イノベーター」と呼んでいる。彼らが国土形成や国民経済における都市と農村の関係を変革(イノベーション)しようという高い志を持っており、しかも地域では地元の人々との関係性を重視した地道な活動を続けているからである。

そうであれば、数は少なくともこうしたソーシャル・イノベーターの発掘と深い関係の構築は、地域の将来に大きな可能性を与えることになる。移住・定住対策のあり方もここから見えてくるように思われる。まさに「移住者が拓く都市・農村共生社会」が生まれようとしている。

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