全国町村会

農政の「相棒関係」

明治大学教授 小田切 徳美(第2894号・平成26年9月29日)

全国町村会は、農業・農村政策のあり方についての提言「都市・農村共生社会の創造−田園回帰の時代を迎えて−」を9月10日に発表した。

タイトルにある「都市・農村共生社会」は「共生・対流」などという表現で、いままでも言われていたものである。しかし、 今回は、「田園回帰」の社会的潮流が生まれつつある中での提言である点でステージが異なる。 若者を中心とした農山漁村移住が活発化しているという報道や中高年のカントリーライフを紹介するTV番組等は、今や決して珍しいものではない。

また、提言は、農業・農村政策をめぐる国と地方自治体のパートナーシップの構築を強調している。農政は、国が決めて、地方自治体が執行する政策が多い。その中で、 制度や補助金の使い勝手の悪さが指摘されていた。

しかし、提言では、それぞれが役割分担を明確化し、そのうえでパートナーシップを結ぶことの必要性が論じられている。 今回の提言作りをリードした全国町村会政務調査会経済農林委員会・杉本博文委員長(福井県池田町長)はこの関係を「相棒関係」と表現する。 言い得て妙である。「パートナーシップ」は従来から「連携」「協力」などと訳されているが、「相棒関係」の方が遙かに迫力がある。なによりも、「相棒関係」が成立するためには、 両者のそれぞれが自立した主体であり、かつ信頼関係で結ばれていることが必要である。

例えば、地域レベルでは「農村価値の創生」という目的、国レベルでは「食料自給率の向上」という目的があり、その次元は異なる。 そのため時には両者は緊張関係を持って調整されなくてはならない。必要なのは、当然「親分・子分関係」ではなく、ずるずるした「お友達関係」でもない。まさに「相棒関係」である。

さらに重要なことは、この関係構築には町村の主体性が求められていることである。提言は、「・・・町村自らの政策立案能力を問われることにもなる。農村とともに歩んできた我々町村にとって、 このような制度の提案は、『覚悟』の表明でもある」としている。

「田園回帰」「相棒」「覚悟」と、いささか大時代的な表現が使われているが、実は今こそ必要なことが満載の提言である。町村関係者はあらためて注目していただきたい。

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