全国町村会

ふたつの二〇周年

明治大学教授 小田切 徳美(第2854号・平成25年9月23日)

去る8月22日に全国町村会は「今後の農林漁業・農山漁村のあり方に関する研究会」を立ち上げた(町村週報第2852号参照)。

町村により組織された団体が、農林漁業や農山漁村の将来やそれをめぐる政策に関心を持つことは当然のことである。 全国町村会は従来も予算要望等により農林漁業政策に対して活発な提案活動をおこなっている。しかし、今回、そのような日常的な活動とは別に、専門的な研究会を作り、 その課題を検討することには大きな意義がある。

第1に、TPP交渉では、農林水産物の関税の撤廃を含めて、市場アクセスの改革が議論されている。交渉結果がどのようなものとなろうとも、 やはり国際規律や国際的農林水産物市場の変化を意識した農林水産政策の基本方向の再検討は避けられない。奇しくも本年はガット・ウルグアイラウンド合意20周年に相当する。 グローバリゼーションの中で振り回され、時にはダッチロール状態にあった過去の20年間の政策を総括し、現段階の方向性を論じるべきタイミングであろう。

第2に、農林漁業政策と自治体との関係の再設定の検討が必要となる。この分野では政策の内容はもちろん、それを実現する執行体制が大きな変化の渦中にある。特に、地方分権改革により、 中央集権的な色彩が強かった政策はその姿を変えつつあるが、残念ながら分権型の農林漁業政策システムの全体像はまだ見えてはいない。 それは市町村合併や行政改革により第一次産業を振興する自治体の体制が脆弱化していることと無関係ではない。つまり、政策改革以前に農林漁業政策の執行体制全般の再構築が喫緊の課題である。 ここでも今年は、分権改革のスタートラインといわれる国会による地方分権推進決議の20周年に相当する。

こう考えると、農林漁業政策や農山漁村政策は、この「ふたつの20周年」の中で、今までの20年間をまず総括し、そのリアルな実態認識を基に、今後を展望することが求められる時期にあったのである。 全国町村会による研究会設立は、歴史的な必然だったとも言えよう。

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