全国町村会

全総五〇年

明治大学教授 小田切 徳美(第2815号・平成24年10月1日)

全国総合開発計画。一般に「全総」と言われるこの国土計画は、経済計画とともに、戦後の日本の高度成長を支えた最大のマスタープランとして評価されている。 他方で、行きすぎた開発主義やインフラ整備偏重の根源として批判の対象ともされてきた。良くも悪しくも戦後日本の社会と経済を語る上では欠かせないのが この全総である。その第一次計画が誕生したのが1962年10月5日(閣議決定)であり、まさに今、50周年を迎えようとしている。

しかし、この計画が目的とした「国土の均衡ある発展」は実現されず、東京一極集中は緩急を伴いながらも長期にわたり続いている。むしろ、 農山漁村における消滅集落、無住化集落という極限の形で問題は残されている。また、都市でも進む住民の高齢化、膨大な買い物弱者の発生にみられるように、 都市も農山漁村も「均衡ある発展」を遂げたとはおよそ言えない。

同様に、「農業構造の改善」を旗印とし1961年に制定された農業基本法は、昨年がやはり誕生50年目となっていた。ここでも、その課題は半世紀以上経つ現在にそのまま残されている。

戦後日本の農山漁村の枠組みの形成に関連した全総と農業基本法が、その目的を達することなく、今に至っているのである。とはいうものの、 50年前の課題がそのまま現在と未来に引き継がれているわけではない。当時とは決定的に異なる条件である国内の人口減少に加えて、日本の先進国化と新興国の躍進、 グローバリゼーションの進行、温暖化問題をはじめとする地球規模での環境問題の発生、そして国内での地方分権の進展等は、今までの50年の延長線上に、 これからの50年が位置するものではないことを示している。

全総の根拠法である国土総合開発法は2005年に国土形成計画法に改正された。また農業基本法は廃止され、1999年に食料・農業・農村基本法が誕生した。そのため、 両者の50周年を祝うことはないであろう。そして、それに代わるように、悲劇の「3・11」が訪れた。それを心に刻むためにも、東日本大震災を折り返しとする 「いままでの50年」と「これからの50年」を深く考えるチャンスを逸することはできない。「全総50年」をそのような意味で厳粛に迎えたい。

執筆者一覧
 バックナンバー
青山 佳世
阿川 佐和子
今井 義典
梅川 智也
大江 正章
大森 彌
岡崎 昌之
小田切 徳美
加賀美 幸子
金澤 史男
木佐 茂男
木村 尚三郎
草柳 大蔵
榊田 みどり
坂本 誠
生源寺 眞一
竹内 政明
田嶋 義介
玉村 豊男
内貴 滋
西川 治
沼尾 波子
橋立 達夫
松本 克夫
宮口 侗廸
村上 和雄
山本 兼太郎
結城 登美雄