全国町村会

「定住自立圏構想」の見方

明治大学教授 小田切 徳美 (第2670号・平成21年2月23日)

「定住自立圏構想」が「構想」から実践の段階に移っている。昨年(2008年)5月に報告書がとりまとめられた同構想は、先行実施団体の募集や地方財政措置の発表等を経て、本年4月より実施される。

この定住自立圏構想をめぐっては、多様な意見が寄せられており、その中には否定的な評価もある。例えば、「そのねらいは合併誘導にある」「内容は合併と変わらず、その推進は合併促進と同じ意味を持つ」等の議論である。

確かに、この構想を市町村の新たな広域的連携ととらえた場合には、中心市と周辺町村が圏域全体をマネージメントする仕組みについて、さらなる議論が必要であろう。そこでは対等なマネージメント、機動的意志決定、そして住民による十分なコントロールの3点を、少しでも高い水準で満たすことが求められている。

しかし、この定住自立圏構想が中小都市と農山村との連携という重要な課題に、具体的に対応しようとしていることは評価されてよい。なぜならば、21世紀に入ってから地方中小都市の人口動向は、周辺農山村部から人口を集めた人口増加(微増)傾向から、減少傾向へ転化しているケースが少なくない。そのことにより、中心部の都市機能の後退も始まっている。さらに、引き続く大規模店舗の郊外立地は、都市機能の分散をもたらし、一層の中心市としての機能低下につながっている。

それによる周辺農山村部の影響は甚大である。しばしば問題提起されている医療、教育の問題のみならず、基礎的な商品の購入が、たのみの中心部でも困難となっていることが指摘されている。生活交通の衰退もあり、最近では農山村の「買物難民」が問題提起されているが(杉田聡著『買物難民』を参照していただきたい)、それは決して誇大表現ではない。しかもその傾向は郊外化が進む地方中心部で現れている。

つまり、農山村地域にとっても、圏域の中心となる中小都市の都市機能の維持・再生なくしては、自らの存立の条件も著しく制約されるという現実が生まれ始め

こうした実態を直視するのであれば、地方中小都市とその周辺農山村との一体的振興策は最重要な課題である

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