全国町村会

「地域主義農政」の前進

東京大学大学院 助教授 小田切 徳美 (第2472号・平成16年3月8日)

少なくとも食料・農業・農村基本法を見る限り、最近の農政の基調には、地域の実情に応じた政策展開を意識し、また政策主体として地方自治体を重視するような「地域主義」が埋め込まれている(本誌昨年5月12日付2438号の本欄参照)

そして、その典型は2000年度より導入された中山間地域等直接支払制度である。この制度では、集落レベルの交付金の活用方法は協定集落に任され、また対象地域の知事特認制度等も設定されている。つまり、制度の仕組みや運用の一部が、地域の知恵と判断に委ねられていることを特徴としている。「地域主義農政」の具体像をここに見ることができる。

その直接支払制度は、来年度(2004年度)で5年目となり、次期対策に向けた見直しの時期を迎えている。農水省は、この制度の政策評価を、いわゆる「第三者委員会」の場で進め、新たな制度設計に着手しようとしている。

ここで注目すべきは、その見直しに際しても、「地域主義農政」を、地域レベルから前進させる動きが見られることである。具体的には、この制度の次期対策に向けて、複数の県レベルで独自の検討と制度提案が行われている。

例えば、山口県では、市町村担当者や県職員による「直接支払制度研究会」の場で、詳細な政策提案を作成し、既に県のホームページ上に公表している。同様の検討は熊本県でも始まっている。

また、新潟県では、農林水産部が「直接支払制度あり方検討会」を設置し、農業者、消費者や関係機関代表者等による検討を行った。筆者はこの検討会に直接かかわったが、その討議の中から、中山間地域対策の「守りと攻めの両立」が主張され、現行の集落協定に加えて、集落等単位での積極的な活性化プランを策定した協定への加算制度とその支払い方法の細部が提案されている。

こうした国の制度に対する地方レベルからの具体性を持った提案は、従来の「陳情」とは異質なものである。それは、そのままでは埋もれがちな「地域主義農政」を地域サイドから、掘り起こし、後退させない動きとも言えよう。市町村段階を含めて、こうした挑戦がさらに拡がることが期待される。と同時に、「地域主義農政」にふさわしい国レベルの対応も望まれる。現在、進められている食料・農業・農村基本計画の見直しの論点もここにある。

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