全国町村会

なぜ、「人口1万未満」なのか?

東京大学大学院 助教授 小田切 徳美 (第2459号・平成15年11月10日)

第27次地方制度調査会の最終報告が、いよいよ公表される。

論点は多岐にわたるが、新たなる市町村合併の推進基準として、特定の人口規模が示されるか否かは、特に重要な争点であろう。しかし、先行する自民党プロジェクトチームの報告では、既に「人口1万」が明記されており、最終報告でこの数字が書き込まれても不思議ではない。

それでは、なぜ「人口1万」なのだろうか。管見の限りでは、合理的な説明は見あたらない。

しかし、実は1万人という数字には、視点を変えれば、それなりの「根拠」がある。それは、条件不利地域とその自治体人口との関係を調べた時に見えてくる。例えば、「条件不利地域振興5法」といわれる法律(過疎、山村、半島、離島、特定農山村)に、なんらかの形で指定されている市町村の実数は2,105自治体であり、それは全自治体の65%に相当する。人口階層別に見ると、その数字は1〜2万人の自治体で56%、2〜3万人で53%、3〜5万人では45%であるのに対して、1万人未満の自治体では85%もが5法のいずれかまたは複数に指定されている。

つまり、「人口1万未満」市町村の大多数は、条件不利地域である。また、そうした性格を持つ地域を全自治体から、取り出す時に「人口1万未満」は、活用しうる基準である。そうだとすれば、そのような数字が設定されるのは、条件不利地域への特別措置も、今後の争点とされるのではないかという心配も生まれてくる。特に、「いま合併を迷っているところがあるが、迷っているところは、結局、交付税があり、過疎債があり、離島や中山間地に対する傾斜配分があるという思いから離れられないのではないか」(地制調第5回総会における野中広務委員・本誌5月12日付2438号)という発言に接する時、その心配はより強くなる。

しかし、そんな臆測はともかく、仮に人口1万未満市町村の合併が今後の焦点となるのであれば、新たなる合併策は自治体再編であると同時に、条件不利地域の再編をも意味することは、間違いない。したがって、新たな市町村合併は、日本における条件不利地域やその大多数を占める中山間地域の将来ビジョンとセットで議論されるべきではないだ

議論は、まだ尽くされていない。

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