全国町村会

農政改革から「地域主義」を掘り起こそう

東京大学大学院 助教授 小田切 徳美(第2438号・平成15年5月12日)

農政改革が、重要な局面に入りつつある。

昨年末に決定された「米政策改革大綱」は、日本農業の最大の課題である米に切り込んだ。この米政策改革を含め、農政改革のキーワードは、一貫して「市場主義」であった。市場原理の一層の導入と同時に、農業保護政策の後退が図られている。

しかし、町村関係者には、そうした一般的な理解と同時に、今回の農政改革には、別のキーワードが潜んでいることを看過してはならない。それは、1999に制定された食料・農業・農村基本法に2つの形で埋め込まれている。

ひとつは、基本法には、「地域の特性に応じて」という言葉が、繰り返し使われていることである(第4条等6カ所)。多様な自然条件に規定され、またそれを活用する農業では、政策が「地域の特性」を重視することは当然のことと言えよう。しかし、それを法律にあえて書き込んでいるのは、今までの画一的農政への反省が含まれている。

もうひとつは、地方自治体の役割を「国との適切な役割分担を踏まえ」(第8条)としている点である。これは、旧農業基本法に見られた「地方公共団体は、国の施策に準じて施策を講ずるように努めなければならない」という、国と地方の主従関係を前提とした規定から決定的に変わっている。

つまり、現在進行中の農政改革には、もうひとつのキーワードとして、地域の特性に応じて、その政策主体として最も身近な地方自治体を重視する「地域主義」が埋め込まれている。そして、実は今回の米政策改革においても、その傾向が見られる。従来の転作助成金に代わる「産地づくり推進交付金」は、「これまでの助成金体系を大転換して、地方分権の発想を取り入れた助成」と説明されている。

町村の農業関係者には、この新たな傾向を後退させない実践が要請されている。今までも「地域農政」「自治体農政」が云々された時代もあったが、それは実現しないまま現在に至っている。「地域主義」は、地域が積極的に掘り起こさない限り埋もれがちでなのである。

言い換えれば、農政の「地域主義」は、地域自身が勝ち取るべきもののである。

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