全国町村会

数字のリアル

日本大学経済学部教授 沼尾 波子 (第2890号・平成26年8月25日)

日本創成会議による人口推計結果とともに、自治体消滅論が巻き起こっている。だが、10年後、20年後に、自分が暮らす地域がどのような状況にあるのかをリアルにイメージできないまま、 自治体消滅という悲観論だけが、まん延してしまわないかが心配だ。

人口推計から地域の将来をどう予測し、対応を考えるか。先日東京都と都内区市町村共同で調査研究を行なう「東京の自治のあり方研究会」が公表した、東京の将来人口推計は印象的だ。 都の将来人口を500mメッシュ地域ごとに推計し、結果を地図に色分けしている。自分の家からおおよそ徒歩5分圏内の将来人口をイメージできるようになっているのである。

この推計から、2050年には東京23区内の大半の地域で、徒歩5分圏内に1000人以上もの高齢者が居住するという結果が示された。医療・介護の充足をどうするか。 そして高齢者の暮らしを地域で支える地域包括ケアシステムをどう運営するのか。地域の課題をリアルに実感できる数字である。

徳島県神山町のNPO法人グリーンバレーで見た数値もまた印象的である。人口減少が進むばかりという推計結果に悲観するのではなく、その結果を踏まえ、 これを持続可能な地域社会にかえていくための戦略を具体的に描いたのである。

どの程度の人材誘致が進めば地域は維持できるのか。そこで、30代夫婦と子供2人の4人家族を毎年5世帯呼び込んだ場合の将来人口を試算するとともに、地域にこれから必要な人材について考え、 移住・定住に向けた戦略を立て、各種の取組みを行なっている。地域に必要な人材を毎年5世帯呼びこむという具体的な試算を通じてその持続可能性が見えてくる。将来をリアルに捉え、戦略を立てるべく、 数字を活用した好例である。その成果が実を結び、町では人口社会増を実現している。

総合計画には人口推計とともに将来ビジョンが描かれるが、地域の将来の姿はなかなか見えてこない。

町村の将来について具体的なイメージが持てる数字を示すこと、そして推計結果から地域の課題を知り、主体的に対応を考えることこそ、こうした数字への向き合い方の基本ではなかろうか。

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