全国町村会

地域ケア・ネットワークが育む信頼

日本大学経済学部教授 沼尾 波子 (第2826号・平成25年1月21日)

復興増税が始まった。さらに来年春には消費税増税が始まるとすれば、今年はさしずめ増税元年。戦後初ともいえる純粋な増税は、国民に重い負担感を もたらすだろう。とはいえ、増税による収入の多くは、既存のサービスの維持や債務削減に充てられる。負担増に対し、サービスの充実を実感できないとすれば、 国民の行政に対する不信感がさらに強まる可能性もある。

こうしたなかで、昨今の社会保障改革の議論の端々に登場するのが「地域」に対する期待である。高齢、障がい、子育て支援など、対人社会サービス分野において 「地域」の人的資源とネットワークを活かした取組みの推進がうたわれる。財源は限られており、サービスの充実には限界がある。そこで、地域で汗をかき、 効果的な助け合いの仕組みを模索せよ、ということである。

町村でも、公立病院や診療所が核となり、在宅医療や在宅介護の仕組みを構築したり、保健師が地区ごとの訪問と見守りを重ね、成果を上げている事例がある。 その多くは保健・医療分野の専門家を中心とするチーム医療・介護である。

専門性が問われる領域であり、役場は受け身になりがちと思っていたところ、先日、町担当課が旗振り役となって地域ケア・ネットワークを構築する取組みに出会った。

愛媛県久万高原町では、町直営の地域包括支援センターと社会福祉協議会がタッグを組んで、高齢者を中心とする住民のケアにあたる。地区単位で毎月行われる 担当地域ケア会議では、介護関係者のほか、開業医、民生児童委員、消防、駐在などの関係者が集まり、情報を共有しながら、ケアが必要な人をチームで見守る 体制を作る。身体介助に留まらず、虐待に対する目配りや、時には悪徳商法のクーリングオフ対応を行うなど、生活面まで幅広く支援する。

地域をよく知るベテラン社会福祉士を役場職員として雇用したことに加え、ケアマネジャーにマイクロカウンセリング等の研修を行うことでコミュニケーション力の 向上を図り、ケアの質を引上げることも目指されている。

もはや「措置」の時代ではない。申請受付と事務処理をしているだけでは住民ニーズに気づけず「手遅れ」になることもある。役場が対話を通じて地域ケアの ネットワークを地道に作り上げていくことが必要だ。その積み重ねが、長い目でみれば、租税負担への理解につながるのではなかろうか。

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