全国町村会

万博の日本列島

東京大学名誉教授 西川 治 (第2405号・平成14年7月15日)

ワールドカップ、俊足好蹴の熱狂が無事にすんで、再び大不況前夜の不気味な静寂に戻った。次は愛知万博。地球社会の未来像と日本列島の役割がどのように表出されるのか気になるが、そのグランドデザインには、全国自治体のふるさとコンクール展も織り込んでもらいたいものである。

日本が初めて参加したのは維新直前1867年のパリ万博。出展は美術工芸品が主であったが、ナポレオン3世への贈呈品には、直径15センチの水晶玉・組立式茶室・源氏蒔絵手箱などとともに、実測日本全図(伊能図)があった。それより約半世紀も前に作成された「大日本沿海実測全図」の精細さと美しさが、すでにドイツやイギリスをはじめとして国際的に高く評価されていたからである。

そこで明治6年のウイーン万博では、伝統産業のみならず、日本式庭園と建築を配置し、さらに近代的科学技術と芸術性を示すために、洋式の山脈画法も加味するなど増補潤色した伊能図を展示、これまた絶賛を博したよしである。

さらに明治37年、日露戦争のさなかアメリカのセントルイス万博では、日本出品中の目玉として、なんと縮尺は10万分の1の巨大な立体式「大日本帝国交通地理模型」(長さ約40メートル)が、わが通運館に並べられて壮観を呈し、誉れ高き風景美と近代化した国土像を如実に示して、観光國日本をも世界にアピールした。製作指導は福岡師範学校の元教員の釜瀬新平(1868〜1930)、この模型の基図が、これまた伊能図を主にして作成された20万分の1輯製図の拡大図であった(長野覚教授の論文による)。

それから1世紀、いまやI・T時代。グローバルパークの日本館ドームには電子式5万分の1の全国景観模型を配置し、その壁面と天井には全市町村の風景・特産・伝統文化・芸能などの動的映像をつぎつぎに投写して、宇宙時代の日本列島三千世界を燦然と輝かしたいものである。

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