全国町村会

赤いランドセル

東京大学名誉教授 西川 治 (第2399号・平成14年5月27日)

色とりどりのぴかぴかランドセル、散歩の道すがら、嬉々として出掛けるその背後から、“元気でね、後はよろしく!”とひそかに声をかける。以前この欄に「過疎に産声を!」との祈念を寄せたことがある(1936号)。それから10年あまり過ぎたが、その前後から富山県東砺波郡平村役場の『広報たいら』を頂いている。毎号その表紙から“小さな王様”が、ぱっちりと輝くお目めで挨拶してくれる。結婚や“こんにちは赤ちゃん”の便りもある。人口・世帯数が前月末より少しでも増えていると、さらに嬉しくなる。

落語家のさるパトロンの夫人から伺がった思い出話し。ある夜ふけ、ろれつも廻らぬ2人の真打ちがやってきた。とまどいながら請じ入れる。ふらつく足で先に2階へ上がりかけたお年上に、買い立ての赤いランドセルが目にとまった。「あっそうだ、うちの娘も入学だ、」と我に返って「奥さん奥さん、車を呼んで下さいっ」、というわけで、なにやら小噺に使えそうなハプニングでした。

教職にある教え子の結婚披露宴では、「第2の人作りはまさに聖職ですが、率先して第1の人創りにも大いに励んで下さい。」と注文するのを忘れない。この両方に国はもっと多くの財政支出を図るべきだ。きっと景気浮揚にも役立つことであろう。

本欄の執筆を分担してから、これでたしか100回になる。この回数までは生き抜きたいものと願い、そのつど生みの苦み、やっと八万字に達した次第。初回(1792号)のテーマは、夢ごよみ。地球暦と地域の文化暦創りを提案した。それから83回までは拙著『日本水土考の余滴』(1999、デマンド)に収録ずみ。そのうち全100回文をまとめて刊行するのも次の夢。幸い出藍の宮口とし廸教授がローテーションに入ったことでもあり、お後がよろしいようで。14年に渡り貴重な紙面を提供下さった全国町村会と読者諸賢に心から厚く御礼申し上げます。

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