全国町村会

笑うネズミ

筑波大学名誉教授 村上 和雄(第2914号・平成27年3月30日)

私どもは「ヒトの笑いの研究」に続いて、仔ネズミを遊ばせて笑わせるという研究をしている。

小さい子どもたちはじゃれ合って遊ぶ時、声をあげて笑う。仔ネズミも人間の子どもたちと同じように仲間と遊ぶ時には、嬉しい時に出す50キロヘルツの超音波を出す。 この50キロヘルツのなき声は、ヒトの笑い声の原型ではないかとされている。

私どもは、仔ネズミの遊びを真似して、人間の手でネズミを遊ばせるティックリング(くすぐりなど)という方法を使ってネズミを笑わせている。

この方法を使ってどのように実験したかというと、私どもは、仲間から離されてひとりぼっちで育った仔ネズミと、楽しく遊ばせて育てたネズミとで、どのような違いが生じるか比べてみた。

これまでの沢山の研究で、ひとりぼっちで育った多くの動物は、攻撃的になるばかりか、ストレスに弱くなり、学習能力も低下して普通に成長できないことが分かっている。 ところが、仔ネズミを楽しく遊ばせて育てると、ストレスに強くなり、学習能力も良くなること、さらに、脳の中の遺伝子のオンとオフも変わることが分かった。

例えば、脳の視床下部という生命維持にとても大切な中枢では、ストレスに関する遺伝子や、喜びを感じるときに出るドーパミンの分泌に関わる遺伝子がオンになった。

私どもの研究で、子ども時代に仲間と楽しく遊ぶという経験は、大人になって生きていくためにとても大切なことだということが分かった。最近、切れやすかったり、 引きこもりになったり、自殺する子ども達がいるが、そのような対処法に繋がるような研究になればと願っている。

 

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