全国町村会

ハングリーであれ、愚かであれ!

筑波大学名誉教授 村上 和雄(第2785号・平成24年1月16日)

アップルコンピュータの創始者であり、自宅のガレージから世界一の企業を作りあげた故・スティーブ・ジョブズ氏の人生は挫折と波乱続きのジグザグ人生であった。彼の母親は未婚の大学院生のいわゆるシングルマザーで、妊娠中から、自分では育てられないから、生まれたらすぐに養子に出すと決めていたという。

生まれてすぐ、母親の望み通り養子に出され、養親の元で育つが、せっかく入学した大学をドロップアウトしてしまう。食費にも事欠く貧乏暮らしの末に、起業したアップル社は成功するが、その自ら興した会社を、他の経営陣との対立がもとで追い出されてしまう。

やがて再度、アップル社に復帰し、世界的なヒットとなるiMacやiPocなどを開発して業績不振に陥っていた同社を再成長に導くが、その矢先、病魔に襲われてしまった。

そのジョブズ氏がスタンフォード大学で行った卒業祝賀スピーチは、感動的な内容を持つものとしてインターネットを通じて広く流布された。その最後は、『ハングリーであれ、愚かであれ』という言葉で締めくくられている。自分自身も、常にそうありたいと願い続けてきたし、皆もそうであるよう願っていた。

長年、禅の修行を積んでいたジョブズ氏は、この言葉によって、何を言いたかったのだろうか。

さまざまな解釈が可能だろうが、枠にはまった優等生、みんなから褒められるようなお利口さんになんかなるな。こざかしく、小さくまとまるくらいなら、愚か者である方を選べ、それも、常識なんかはみだしてしまう器の大きなバカになれ。ジョブズ氏が若い人に贈り、自分にも言い聞かせていたのは、そういうことなのだと思う。

いつも、小さな成功に満足せず、小利口ぶらず、一つの道をひたすら究めようとする愚かさを大切に維持するとき、その愚かさが石や岩をも砕く重く大きな武器となって、あなたを成功に導くだろう。

 

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