全国町村会

大震災に遭遇して思う

筑波大学名誉教授 村上 和雄(第2760号・平成23年5月23日)

3月11日、未曾有の大地震、大津波そして原発事故の三つの大惨事がほぼ同時に発生した。世界の歴史上まれに見る大震災である。この東日本大震災には、大自然の重大なメッセージが含まれていると直感した。いま、環境や地球にやさしい技術や社会をつくろうとしているが、それはむしろ逆で、地球生命がやさしいから人間の我が儘をこれまで許してきたが、その我慢も限界に来ていることを今回の大震災は示している。

日本人は古来より神仏を尊び、自然の恵みに感謝し、お互いに助け合って生きてきた。しかし、この精神文化の良き伝統は消えかけ、その遺伝子のスイッチはオフになっていた。遺伝子は環境によってオンになる。今回の大震災は、古来から伝わってきた日本人の精神文化の遺伝子のスイッチをオンにする誠に厳しい試練ではないか。

被災地などの人々の冷静で秩序正しい行動に対し、各国から賞賛の声が多数上がっている。私たちにとっても、大震災後の日本人の対応は感動的だった。宮城県気仙沼市の中学生の卒業式で、涙を必死でこらえながら「天を恨まず、運命を受け入れ・・」という卒業生代表の姿は、これぞ日本人という素晴らしい姿を、たった15歳の少年が見せてくれた。

この国難とも言うべき大震災に際し、失いかけていた日本人の他人を思いやる心や絆を取り戻し、一人ひとり自分でできることを精一杯やり、お互いに助け合うことにより、大きな回復の効果が上がると思う。この大震災の直後から、献身的活動を続けておられる方々に、心から感謝しよう。

歴史を振り返れば、日本は日露戦争、太平洋戦争などの誠に厳しい試練に耐え、ここまで繁栄を築いてきた。世界の最新の世論調査によれば、日本はベストカントリーの一つである。

今回の試練も、お互いに助け合い、大自然に生かされ、生きていることに感謝の祈りを捧げるような精神を持てば、この国難は必ず乗り越えられると確信している。


 

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