全国町村会

世界で注目されている日本食

筑波大学名誉教授 村上 和雄 (第2608号・平成19年7月16日)

現在、世界中で約10億人の人々が飢えている。そして毎年、人口は貧しい国を中心に約1億人増加し続けている。将来の食糧事情は決して楽観を許さない。食糧事情を考える上での問題点は、1人当たりの平均値で計算することである。しかし、世界的な飢餓が起これば、食糧の買い占めや、奪い合いが起こり、富めるものや生産者に食糧が集中する。

そこで、イネの遺伝子を解析することによって、栄養価が高く美味で、環境条件の悪い所でも育つスーパーライスを迅速に作ることができると期待されている。

コメは栄養価の面でも優秀な食品であるから、世界で注目されている。一般に一つの食品だけを比べると、動物性タンパク質は植物性タンパク質より栄養価が高い。これは、動物性の肉タンパク質と、植物性のコメのタンパク質だけを単純に比較しているに過ぎない。

日本人はコメと共に、豆腐、納豆、みそ汁などの大豆食品を一緒に食べることが多かった。このコメと大豆を組合せた時の栄養価は、動物性タンパク質にほぼ匹敵する。コメと大豆は、お互いに不足している必須アミノ酸を補うのである。日本人の伝統的な食事は、まさに生活の知恵であり、日本食が欧米で大いに評価されているのも自然の成りゆきである。

古来、稲は食物としてだけでなく、日本の風土や文化を象徴する植物であった。田植えや秋の収穫祭など、日本人の生活パターンや行事は、すべて稲の収穫サイクルに基づいて形づくられてきた。稲は、弥生時代以来の農耕文化を形成してきた植物であり、日本人の精神や生活の根源をなしてきた特別なものである。

このように、日本人にとって特別な意味のある稲の遺伝子解明に、日本人チームが活躍していることは嬉しいことである。(「イネゲノムが明かす日本人のDNA」家の光協会)。この遺伝子の解明を、スーパーライスのような品種の創出に結びつけることが出来るのか、これからの研究に期待される。

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