全国町村会

「人づくり」の原点は母と子の絆

筑波大学名誉教授 村上 和雄 (第2588号・平成19年2月5日)

いじめっ子、いじめられっ子、非行、家庭内暴力、校内暴力など、いわゆる問題のある子供の場合、親子関係や家庭といったものの崩壊にその原因が根ざしているケースが多いということが、研究によって明らかにされています。その人の人間性や人格の基盤は、乳幼児期において殆ど形成されるとみていいでしょう。

遺伝子から見れば、父、母だけではなく、太古からの生物の歴史が遺伝子に書き込んであると考えられます。その中のどの部分が出てくるか、分からないのです。それは、環境やタイミングによります。この環境は、心の持ち方、使い方なども関係すると思われます。

おそらく遺伝子の中には、獣時代からの遺伝子の情報も入っているわけです。それが、どれでも出しうる可能性を持っている。ある場合には、獣みたいになる。ある時には神様みたいになる。それは、同一人物で起こる場合があります。そういう基本的な情報が遺伝子に入っているのでしょう。そして、いろいろなきっかけによって、遺伝子がオンになる可能性があるのです。

子供は日々の生活の中で、両親を見ながらその生き方を学び取り、兄弟姉妹に接しながら、少しずつ人間的に成長していきます。しつけや社会道徳も、こうした家族関係や家庭環境の中から学び取っていくものなのです。ところが、核家族化が進み、マイホーム主義と共働きが一般化する中で、こうした「人づくり」の基盤が見失われてきました。さらに憂慮すべきことは、職業を持つ女性が子育てよりも仕事に重点をおいたため、「人づくり」の原点である母と子の絆が薄められつつあるという現状です。 

母と子の絆が切れたとき、実に深刻な悪影響がその子供の人格形成に及ぼされる心配があるのです。母と子の絆が核になり、父親や兄弟姉妹などとの「心の絆」が形成されます。そして、やがてはそれが、家庭外での生活の場における人間関係の「心の絆」として発展していくのです。「人づくり」の原点が母と子の絆にあるといった理由も、ここにあるのです。 

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