全国町村会

世界に貢献する高い志を持つ

筑波大学名誉教授 村上 和雄 (第2578号・平成18年10月23日)

終戦直後の日本は、まさしく「どん底」でした。その焦土と廃墟の中から日本は立ち上がり、復興を遂げ、世界有数の「経済大国」になりました。日本がどん底からはい上がることができたのは、非戦の決意をし、持ち前の勤勉さで、エネルギーの殆どを復興にかけたからです。もちろん、その能力を日本人が備えていたことは言うまでもありません。

世界には飢餓で苦しむ約8億3千万の人々がいるというのに、日本人の毎日の食事は、かっての王侯貴族をしのぐ世界中の豊富な食材からなっていて、カロリーの過剰摂取による肥満が健康をおびやかしています。日本人は世界の貧しい国の人々から見れば、物質レベルでは理想的です。しかし、私たちにその自覚があるでしょうか。そして日本はいま、誇り高き民族でしょうか。現在、多くの日本人は、自然を尊び神仏に感謝して生きるという思想を、表面的には忘れてしまいました。

古代より日本人は、八百万の神や、大自然の偉大な働き(サムシング・グレート)についてずっと考えて生きてきました。これからの時代は、サムシング・グレートに感謝して、自然と共に生きるという日本的な考えが、世界中で必要になってきます。

科学・技術に片寄り、弱肉強食、優勝劣敗の考え方では、人類はやがて滅びるかもしれません。人間も植物も動物も同じ遺伝子暗号を使っているのです。生きとし生けるものは、生物の長い歴史から見れば、すべて兄弟姉妹とも言えます。

自然と共に生きるという、日本人が培ってきた文化や思想は、世界の平和に役立ちます。科学・技術を高いレベルでマスターしている日本人だからこそ、その高貴な精神文化を世界に向けて発信できます。いまの日本人に精神文化の遺伝子は、眠っているに違いありません。この遺伝子をオンにすれば、日本は、科学・技術と日本文化を併せ持つ素晴らしい国になり、世界に貢献できるはずです。 

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