全国町村会

空家と山林等の管理の問題に寄せて

早稲田大学教授 宮口 とし廸 (とし=にんべんに同)
(第2943号・平成27年12月14日)

シンポジウム等の会合の表題に「人口減少時代における」と冠するものが最近急激に増えたが、そういう時代が来ることを筆者は早くから指摘し、特に人口減少が続く自治体では、 むしろ少数の人口を前提にした地域経営を創造するという発想が大切だと唱えてきた。地域の価値は決して数のみで決まるものではないからである。

人口減少に直結する空家問題に関して、昨年11月に「空家等対策の推進に関する特別措置法」が公布されたことは関係者には周知のことであろう。富山県立山町の舟橋町長はこれに敏感に反応され、 今年度この法律に基づく協議会を発足された。県内に住む筆者にも参加の依頼があり、重要な問題を学ぶ機会と思い、喜んで参加させてもらった。

立山町においてはまもなく計画が策定され、法律に規定されている危険な空家に対して指導・勧告に始まる手続きがとられると思われるが、この法律自体、強力な私的所有権に関する、 人口減少に伴う変革の端緒ととらえられてしかるべきであろう。

山村の世帯の減少に関連して、私有林の所有境界が不明確になっている問題がある。かつては山村のお年寄りから、「孫を山へ連れて行って自分の山林の境界を教えた」と聞いたものであるが、今は境界どころか、 離村した世帯でその後しかるべき相続の手続きが取られていない土地が多くあり、新たな利活用を進める際に相続人の調査すら大変だという状況がある。

筆者は農山村集落が簡単に消滅するとは毛頭考えていないが、奥地で無住化したような場合には、宅地を含む集落跡地すら所有権者の特定が困難になって行く。自然に帰ると言えば聞こえはいいが、所有権は残る。 将来は所有権者が管理できない土地がますます増えると予測され、所有権者が管理を放棄している土地を市町村が有効活用できるような法的な道筋をつけるべき時代が来ていると、筆者は考える。

北海道ニセコ町は、平成23年に、町の審議会の判断によって水源地での施設の設置を止めることができる条例を制定したが、これも私的所有権に対する一石と評価できる。地域の活性化の基本は資源の有効活用である。 私有財産である土地という資源の活用に向けて、国と自治体を挙げて知恵を絞る時に来ているように思う。

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