全国町村会

森の町北海道下川町の進化

早稲田大学教授 宮口 とし廸 (とし=にんべんに同)
(第2932号・平成27年9月7日)

空前の猛暑が収まりかけた8月11日、北海道下川町を10年ぶりに訪ねた。北海道でも北の果てに近い町で、10年前には厳寒期を幻想的に彩るアイスキャンドルミュージアムの実行委員会が、 さらに5年前には、広大な町有林を活用した持続的な森林経営と地域産業の育成で町自身が、過疎地域の総務大臣表彰を受けている。環境未来都市にも選定されており、 10年前の表彰の立役者の谷一之氏が町長に就任されたとの情報を得て、町のその後の進化を確かめる旅と相成ったものである。

下川町はすでに30年以上も前に、3000haの町有林に、毎年50haの伐採と植林を60年続ける循環型森林経営という遠大な計画を立て、雇用の確保と地元加工業者への木材安定供給を目指した。 そして昨年からついにそのサイクルが回り始めたという。20年ほど前に当時の原田町長から伺った夢が、森林資源の徹底した有効活用により、実現しつつある。 それを可能にしつつある基本は木質バイオマスエネルギーの活用であり、平成16年の町有五味温泉への導入を始めとして、幼児センター、育苗施設、小学校、病院、中学校、 町営住宅などに順次バイオマスボイラーを導入し、すでに公共施設の熱供給の60%を賄っている。

とりわけ特筆されるのは、2000人が150人足らずにまで減った最も過疎化の激しい一の橋地区を、バイオマスボイラーによって、 22戸の集住化住宅を含むエネルギー自給の未来型バイオビレッジにつくり変えたことであろう。そして木材は、建築用材やバイオマスチップどころではなく、工夫した木炭による土壌改良剤や水質浄化剤、 加えて土木関連資材など30種類以上の加工品となる。女性有志の起業によって精油や化粧水までつくられているのは驚きである。

以上に加えて、森のある暮らしに惹かれて下川にIターンした若者たちによって運営されている〈NPO法人森の生活〉は、施設の指定管理と併せ、実のある森林環境教育の実践活動をしている。 この町ではこの活動によって、多くの子どもたちが木を伐り、植えることを体験しているのである。多数受け入れている地域おこし協力隊員の任期終了後の活動を複合的に支えるために、 まさにそのものずばりの〈NPO法人地域おこし協力隊〉も設立された。自由闊達な谷新町長のもとでの、森の町としてのますますの進化発展を祈りたい。

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