全国町村会

補助金から補助人へ

早稲田大学教授 宮口 とし廸 (とし=にんべんに同)
(第2687号・平成21年7月20日)

地方の人の口から、「欲しいのは補助金より補助人だよね」という声が聞かれるようになった。特に高齢化が進む過疎地域などで地域を支えるための新しいしくみを立ち上げることは差し迫った課題であるが、そのための人材が地域にいるかどうかが大問題である。

新しいしくみをつくる作業においても、内輪の議論だけでは、必ず想定外の壁に突き当たるであろう。かつて地域づくりに素晴らしい実績を上げた市町村は、中心になった首長や職員が、交流によって外部の人材を活用することに天才的に長けていたケースが多い。補助人の派遣の草分けは旧国土庁時代に始まった国交省の「地域振興アドバイザー派遣事業」であろう。昨年度までに21期を数えた。持ち味の違う3名の専門家を3度にわたって派遣し、地域での議論をリードしてもらおうというもので、すぐに実効が上がらなくても、取り組みが数年後に花開くことが各地で起こった。ハードな建物などとは違い、人へのインパクトはその後の成長を喚起し、少し時間が経ってから成果が表れてくるものであり、ここにこそソフト事業の神髄がある。

NPO法人地球緑化センターの「緑のふるさと協力隊」は1年間の長丁場の派遣であるが、今年度16期目を迎え、地域に定住した人もかなりに上る。農水省はそのショートステイ版ともいうべき「田舎で働き隊」を昨年度補正で創設し、総務省は、筆者らの過疎問題懇談会が提案した集落支 援員に加え、「地域おこし協力隊」を創設した。新しい過疎対策でも、人材の長期派遣が議論に上っている。

地域の補助人は、必ずしも高度な専門家ばかりである必要はない。筆者らが関わってきた国交省の「地域づくりインターン事業」は、未熟な学生であっても、地域の人が学生の面倒を見ながら活動する中から、新しいパワーに繋がる人の出番が地域に生まれることが真のねらいであった。今年で10年目になる。ただ、補助人の派遣事業がいくつも生まれるこの時代に、残念ながら国交省の二つの事業は、見直しを検討しているようである。このような事業の変わらぬ価値について、是非地方からも声を上げていただきたいと思う。  

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