全国町村会

地域発のアニメ

ジャーナリスト 松本 克夫 (第2988号・平成29年1月30日)

『君の名は。』や『この世界の片隅に』のヒットで、アニメの感動を呼ぶ力を改めて知らされたが、アニメの地域を発信する力も可能性を秘めている。この面で先駆けたのは福島県三春町を拠点にした福島ガイナックス。同社制作の震災後5年の福島を記録した『みらいへの手紙 この道の途中から』は、10本のドキュメンタリーから成る。避難を巡る選択に迷う「雨上がりの朝」、富岡町の富岡高校サッカー部の最後の試合を声援する「エール」、帰還前の南相馬市小高区で開いた食堂の「おだかのひるごはん」などである。迷いやためらいもある被災地の気持ちを伝えている。

地元の三春町の子どもたちと共同で作り上げた『三春のハルミーゴ』は、同町に越してきた8歳のはるみちゃんが花の妖精3人組と出会う楽しい作品だ。仮設住宅に住むフィギュアスケート選手を目指す少女が主人公の『想いのかけら』、伊達家発祥の地である伊達市をPRするための『政宗ダテニクル』、地元銀行の入行3年目の女子行員を主人公にした『未来への架け橋』などの作品もある。

アニメは東京発が当たり前のような先入観もあったが、福島ガイナックスの浅尾芳宣社長は、「情報ハイウェイのおかげで、今はどこにいても作れます」という。しかし、地方への進出は簡単ではない。福島市出身の浅尾さんも、三春町を拠点にするまでに7〜8カ所断られたという。同町では、たまたま廃校になった中学校の校舎が空いていた。そこにスタジオと「空想とアートのミュージアム」を併設した。アニメファンが集まるし、16人のスタッフの県内採用で雇用も生まれた。「こどもまつりin三春」など同社企画のイベントも地元盛り上げに一役買っている。

「アニメで地域を発信したら、地域に足を運んでもらえるようになると思います。福島県ではそれが復興につながるのではないでしょうか」と浅尾さんは期待する。アニメと組む新手の地域おこしの幕開けである。

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