全国町村会

若者は社会貢献を目指す

ジャーナリスト 松本 克夫 (第2955号・平成28年4月4日)

東日本大震災から5年。一部を除き国勢調査に見る被災地自治体の人口減少は著しい。しかし、合併前の旧町村単位で見れば、さらに極端な減少地域があることがわかる。 震災前に4,000人以上いた宮城県石巻市雄勝町の人口は4分の1に減った。果たして合併がなかったらどうだったか。

その雄勝町では、恐らく交流人口は増えている。元商社マンの立花貴さんらが開設した「モリウミアス」などの効果によるものだ。これは雄勝の里山里海を活用した農林漁業などの複合体験施設である。 廃校になった小学校を改修したものだが、改修には全国から延べ5,000人以上のボランティアが参加した。昨年7月にオープンして以来半年間で、子供たちを中心に宿泊者は700人ほど。 海外からの参加者もいる。

立花さんは、地元の漁師たちと「株式会社雄勝育ての住人」も設立した。会員に魚介類を送るだけでなく、会員自ら雄勝に来て、養殖などを手伝う仕組みである。文字通り共に漁業や町を育てる人たちである。

同県気仙沼市には、御手洗瑞子さんらが設立した「株式会社気仙沼ニッティング」がある。御手洗さんは、震災からの復興に尽くそうと、ブータンでの産業育成の仕事を切り上げて帰国した。 何もかも失った被災地でもすぐ始められる事業として選んだのが手編みのニット製品である。漁師町には編み物文化があるとにらんでの創業である。今では、60人の編み手を抱える会社になった。 オーダーメイドの高品質の手編み製品は話題を呼び、気仙沼を訪れる顧客も増えた。仮設住宅暮らしの女性たちも編み手として誇りを取り戻した。

阪神淡路大震災はボランティア元年と呼ばれるほど日本にボランティア活動を定着させた。東日本大震災は若者により持続的な社会貢献活動を促したように見える。 社会貢献に目覚めた若者のセンスで、地域が秘めていた技や教育力を引き出し、外部とつなぐ。そんな光景を各地で見てみたい。

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