全国町村会

地方創生で見えた矛盾

ジャーナリスト 松本 克夫 (第2907号・平成27年2月2日)

近年の東京は、ニューヨークを真似るつもりかと言いたくなるほど、方々で超高層ビルがにょきにょきと建ち上がる。国家戦略特区に指定され、容積率規制が緩和されるから、 一段と建設に拍車がかかるだろう。「企業が最も活躍しやすい国」を掲げるアベノミクスの主戦場は東京である。グローバル企業に選ばれるためには、職住近接の便利で快適な国際ビジネス拠点が欠かせない。 大手町、品川などいくつもの地区で摩天楼化が進むのはそのためだ。

国家戦略特区では、雇用労働相談センターを開設し、外国人医師による外国人患者の診療も認めるらしい。金融を始めとした外資系企業にとっては、至れり尽くせりだから、いやでも東京に集まるだろう。 東京では、これに2020年の五輪会場や交通インフラの整備が加わる。半世紀前の東京五輪同様、大規模な投資を伴う都市改造は、東京への一層の人口集中を招きそうだ。

アベノミクスは、地方では「強い農業」を実現するため、農地の大規模経営への集中を進めている。離農者を増やし、若者の流出を促すだろう。文部科学省は、小中学校の統廃合の基準を見直して、 広範囲での統廃合をしやすくする「手引」をまとめた。学校がなくなる地域では、離れる人が増えよう。一方で東京の人口吸引力や地方からの人口流出圧力を強めておいて、 他方では東京一極集中是正を旗印にした地方創生を推進するという。矛盾してはいないか。

安倍首相は、昨秋の臨時国会での所信表明演説で、島根県海士町の成功例を紹介しながら、「やれば、できる」と地方に発破をかけた。 国が年末に決定した地方創生総合戦略では、「地方自らが考え、責任を持って総合戦略を推進し、国が伴走的に支援することが必要」と記している。地方創生の主役は地方という宣告である。 一般論としてはその通りだが、一極集中の要因をつくっておきながら、一極集中を止める責任を地方に押し付けるのはいかがなものか。

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