全国町村会

壬(みづのえ)の意味

評論家 草柳大蔵(第2382号・平成14年1月7日) 

明けましておめでとうございます。永い間「日本の転換」という言葉が言われてきましたが、今年は否応なしに3つの転換点があらわれます。

第1は「ペイオフの実施」です。金融機関が倒産した場合、預金は1,000万円までしか払い戻されません。この制度の実施を前に預金者の「預け替え」がどのような形をとるか予測がつきません。笑い話ですが、A銀行に3,000万円を預金している人が、同行の6つの支店に500万円ずつ預けて、これで大丈夫と人に話していたそうですが、こういう早とちりを案外人はやるものです。お互いに気をつけましょう。

第2は4月から小・中・高校の「学習指導要領」が改変されることです。「ゆとり教育」の名の下に学習時間が削減され、学校の自由裁量による綜合学習時間が設けられます。これをいかに活用するかで子どもの全人格的成長が変ってきます。今年からは地域の人々の学校教育に対する助言・協力・参入が、ぜひ必要になります。

第3は、町村合併に拍車がかかることです。現在、町村数は全国で2,552ありますが、これを1,000にむかって合併しようというのが総務省の考えです。合併した町村には交付税など税制面で特別のはからいが見られますが、福島県の矢祭町のように「わが道をゆく」を宣言したところもあります。私も、この町を何度か訪れていますが、自己完結的な地域づくりを支えているものは静かな郷土愛です。孟子は「窮(くる)しくとも義を失わず」と言いました。こういうタイプの町村が全国にあらわれ、ITでネットワークを形成するのもひとつの行き方でしょう。「E-ビジネス」「E-ポリティックス」に続いて「E-アドミニストレイション」でしょうか。易経によると今年の干支は「壬午(みづのえうま)」ですが、「壬」には「新しい命をはらむ」という意味があるそうです。不況下、なにかひとつ、はらんで育てるものを見つけましょう。

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