全国町村会

守旧派退活から始めよう

評論家 草柳大蔵(第2366号・平成13年8月6日) 

小泉純一郎首相は張養浩(元の名臣)がその著書『為政三部書』の中で説いた“任怨”をはじめて政策の中に採り込んだ政治家である。民族社会の100年先のことを考えて、怨まれることを承知で民衆に耳の痛いことを言い、協力を求めるのが「任怨の政治家」である。戦後の歴代首相は、あえてこの姿勢を執らなかった。果せるかな、一部の政治家・学者・言論人の中に「大衆はとっくに痛みを押しつけられている」という疑似マルキシズム的な反対論が出たが、肝心なことは政権担当政党の中に守旧派というグループがいて、彼らは「改革」より「現状維持」が望ましいのである。町村の首長は、地方財政も「聖域なき構造改革」の対象に入ることが明白になった今日、息をひそめて成行を見守っているのではないだろうか。

しかし、守旧派の先生方も今度という今度は自分の選挙区に「聖域」を作るわけにはゆくまい。一橋大教授の田近栄治教授が指摘するように「地方財政の規律のユルミによって、自治体の財政努力は地方税の増収よりも政策的にきまる地方交付税や補助金による歳出の確保にむかった」、したがって「はじめに地方財源論があるのではなくて、交付税改革の上にはじめて地方財源論がある」(日経新聞・経済教室・7月6日付)ということになる。

そこで田近教授は新しい地方財政のあり方を提案しているが、私が興味を覚えたのは、まず全自治体の協議で「基準財政需要額」をきめ、同時に全自治体が負担する率をきめる。その後、全自治体の意見を聴取した中立的な機関が基準財政需要額のルール化を目指す。

こうなると、国に頼る(守旧派の世話になる)仕組みがなくなり、地方の財政努力は税収増にむけられる。

議論のあとはシステムづくりだ。システムがしっかり作動し出すと人間までしっかりする。

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