全国町村会

合併しなかった村が13年経って

九州大学名誉教授・弁護士 木佐 茂男(第2987号・平成29年1月23日)

2002年頃からの市町村大合併。これへの諸手を挙げての賛辞はあまり聞かない。逆に、マイナス面が多々指摘されている。しかし、合併しなかった小規模自治体の現状と課題を検討する論稿もほぼ見つからない。そこで、2016年11月に単独で残った小さな村(人口約1500人)のその後を検証するシンポジウムを行った(詳しくは、『地方自治職員研修』(公職研)2017年2月号「特集」を参照)。

13年ほど前、2003年の秋のことである。この村(当時の人口約1800人)は、2つの合併パターンのいずれか、さもなくば単独か、という議論に揺れていた。早い時期に住民が行った署名活動では単独賛成派が多数を占め、これを受けて村長が4町村の合併協議会から離脱を表明した。その後、改めて村が正式に3案について住民投票で住民の意向を問うた。その際には、4町村合併支持率が4割であったが、過半数には至らなかったため、結果的に村単独で残存することが決まったのである。果たして、13年後はどうなっているのか。

シンポジウムでは、懸念材料であった村財政、地方政府の自律、コミュニティや地域活性化の側面、地元でのアンケート調査結果の各報告をベースに、全員参加の5グループの討議を経て、翌日に総括討論をした。村の財政は、合併市町村とさほど変わらないか、やや改善した。村民の声には、周辺の合併自治体住民からの羨望があることや、合併論者から転向した旨の回答もあった。少数だが、現時点でも合併肯定論もある。

ただ、村外からの移住者や事業者らからは、村執行部や役場職員への不満も少なからずあり、地域の素材、グループ、人財を生かし切っていないという意見もあった。いわば、せっかく残った地域資産のネットワーク化、コラボレーションができていない、少子・高齢社会化に向けた大きなマップも描き切れていない指摘と思われる。ささやかなシンポジウムであったかもしれないが、日本の縮図模様が見て取れる機会となった。

上記雑誌の特集タイトルは、「合併しなかった自治体のこれから」とされた。まさに、今少し生かすべきであった単独路線のメリットを顕在化させるのは「これから」である。

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