全国町村会

短くなる 速くなる

九州大学大学院法学研究院教授 木佐 茂男(第2816号・平成24年10月8日)

まるで自分の人生の残り時間を表現しているかのようなタイトルであるが、話は、チト違う。

福岡から島根県にある実家への帰省時に、列車や飛行機を利用しないときは自動車使用で所要時間と高速道路料金のバランスを考えながらルートを選んできた。 九州内は高速道路利用が不可欠なので、中国地方に入ってからの道路の選択肢がここでの論点である。この10年近く、当初は可能な限り高速道路を使った。 一般道と高速道利用では、前者は所要時間が3時間程度多く、疲労度も大きい。しかし、実験的にいくつかのルートの一般国道を走ってみると、通過のたびに、 走行距離が短なり、所要時間も短縮化され、高速道利用と変わらなくなってきた。

理由は比較的簡単である。実家のある市を除いて、途中にある6市のすべてで市内中心部を通ることがなくなった。合併前の市であれ、町村であれ、 どの地域も迂回通過地となり、かつての中心市街地はいっそうの衰退の道を歩んでいる。

だが、沿道には、バイパス建設促進や高速道全通を求める看板が並ぶ。誰のために? 高速道路の新規開通で、一気に沿線町村全部が衰退を迎えるという危惧もある。 島に橋がかかったため補償を求めたフェリーや小規模海運の会社が思い起こされる。高速道路新設の影響は一事業者の問題にとどまらない。 沿線自治体が一気に衰退の運命を迎える悲惨さが目に浮かぶ。

「高速道路建設推進協議会」の総決起集会などに出る人は誰か、と地元の人に聞くと、土木建設業者が中心です、という答え。なるほど、理解できる。 インターチェンジやジャンクションの設置場所選定も私には不可解なことが多い。

郷里では信じがたい農道や無謀な空き地などがいくらでもある。これはポカミスの無計画ではなく、利害関係者の「参加」と「計算」に基づき、誰かの利得になる「計画」による。

この国では、「短」と「速」を生活の質の向上に結びつける「計画」はありえないのだろうか。私の知る限り、ヨーロッパでは、高速道路ができても古代や 中世以来の伝統ある街並みはきちんと生きている。この違いを埋める仕組み研究がもっと必要だろう。

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