全国町村会

正義に適った義援金配分を

九州大学大学院法学研究院教授 木佐 茂男 (第2757号・平成23年4月18日)

言葉に尽くしがたい悲惨な自然災害が起きた。当初の自然災害は、次第に人災の要素も帯びてきた。この間、私の頭の中は、義援金が本当に被災者に被災の程度に合わせて正しく配分されるかという疑念でいっぱいである。厚労省が関与する義援金配分割合決定委員会は、4月8日、死者や行方不明者、住宅が全壊した世帯、原発事故による避難世帯に各35万円の義援金支給を決めた。

1982年の長崎大水害の後で、市長が自己の選挙前に義援金を被災地域以外に配ったとして違法性が問われた住民訴訟で、裁判所は自治体への義援金は歳計外の現金で住民訴訟で争える「公金」ではないとした。仮に首長らが不適切使用をしても住民訴訟では争えない。

2005年の福岡西方沖大地震に伴う福岡県内被災者向けの義援金に関して、あるテレビ局は被災者に配分されず役場の建物補修などに使った自治体が少なくないことをスクープした。県防災計画が定める配分基準もおかしかったが、放送だけで事件は終わった。

国の防災基本計画に、配分手続の記述はないに等しい。日本赤十字社法、災害対策基本法、災害救助法にも義援金配分関係規定はない。社会福祉法は、共同募金の寄付金の配分につき国や自治体の干渉を禁止しているが、災害時の義援金は、「共同募金」の枠外のようであり、法的規制は不存在とみえる。

今回、義援金配分割合決定委員会が扱う義援金の配分の過程も今後の手続も疑問符だらけである。クレジット・カードでの寄付や、各種店舗・街頭でのカンパ、新聞社等に集まった義援金の今後の流れも見えない。

政府の審議会でも、この種の寄付金の配分額や決定プロセスの不透明さが指摘されてきた。今後は、各自治体の配分委員会が、配分金額を決め、被災者に届けるという。配分委員会のあり方が重要になる。

最大の危惧は、義援金の不公平な配分どころか、人々が信頼をして寄附した組織の中での一部消滅である。ないことを願う。信頼を得るためには、義援金の私腹化を避ける手続と配分過程の公開が何よりも必要である。

孤独や無縁が叫ばれる世の中にあって、我々は今回、他人事では済まされないという心の紐帯が強固に存在することを確信した。集められた浄財がどこにどれだけ配分されたのか、尊い善意に応える当たり前の姿勢が問われている。そこまでやっての復興支援である。

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