全国町村会

町や村に<憲法>があるのは、おかしいか?

九州大学大学院法学研究院教授 木佐 茂男 (第2713号・平成22年3月15日)

ある自治体が継続的に行っている調査を基礎として判断すると、国内で制定された自治(まちづくり)基本条例数は、2010年の3月議会が終わると200を超すように思える。制定途上の自治体も多いことから、自治(まちづくり)基本条例を制定する基礎自治体は1割を超えることとなる。この新しい型の基本条例の法的性質について議論が続いている。

ここに来て、2009年夏の政権交代により、政府が2つの地域主権に関わる基本法を制定すると言い、作業が始まっている。国のレベルで地方政府基本法があっていいのか、それは通常の法律と上下関係があるのか。また、国内で町や村が自治(まちづくり)基本条例を作ること自体が問題なのか。それを「憲法」とか、「最高規範」と言っていいのか。

翻って考えてみると、どのような組織・団体でも定款・規約・規則・学則などの名称でその組織の最高ルールを持っている。基本ルールがないのは自主研究会とかボランティア団体の一部と日本の自治体くらいであろう。日本の地方自治体は、その組織根本規範を持たずに仕事をしてきた。「何とかの七不思議」の一つに挙げてもよかろう。定款もなしに自治を行えたのは、地方自治法や地方財政法が子細に自治体の制度と議会などの運営方針まで定めており、一見、自治体ごとに独自の規定を置く必要がないと、自治体側が勝手に思っていたからである。

スイスの市町村をランダムに調べると、かつても述べたが、ドイツ語圏の少なくないところでは、連邦、州、郡、市町村にも、連邦と同じ呼称の「憲法」がある。

日本政府が制定しようとしている地方政府基本法などは他の法律と同格になるのだろうか。先頃、地方行財政検討会議で西尾勝委員から、憲法を実施する法律として別格扱いをしてもいいのでは、このことは地方自治体にも当てはまるのでは、という意見が出された。各地で「まちの憲法」や「最高規範性」の議論で苦しんでいる方々にとって、大いなるヒントになるであろう。 

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