全国町村会

小学生あこがれの職業

九州大学大学院法学研究院教授 木佐 茂男 (第2673号・平成21年3月16日)

韓国では、小学生が将来なりたい職業のベスト3は弁護士、医者、政治家だという(李芝妍 「2009年開学を迎える韓国の法学専門大学院をめぐる動き」『法律時報』2009年3月号84頁)。そして、同国でもこの2009年4月に、5年前に日本で始まったと同じようなロー・スクール(LS。韓国では法学専門大学院と称する)が発足する。それはどういう関係なのか。

この韓国では、優秀な高校生らが素質・適性・興味と関係なく法学部や医学部に進学してくる現実があるそうだ。この傾向は日本にもある。単に成績がいいから法律家や医者になるのは良くない。だから、実務や職業倫理を踏まえた法律家を育てるべし、というのはわが国でも同じである。

だが、それにしても、なぜ韓国の小学生の職業ベスト3に弁護士や政治家が入っているのか。日本の場合、小学生男子は、スポーツ選手が33.6%で、ダントツの1位。ついで、4%から3%台で「医者・歯科医・薬剤師」と、「学校の先生」が続く。小学生女子でも、1位から3位は、「獣医師・動物飼育・ペット屋など」、「幼稚園・保育園の先生」、「パン屋・ケーキ屋・栄養士」と続く(2007年内閣府調べ)。日本で医者が一応入っているのは身近な職業だからであろう。

日本で弁護士や政治家が職業にカウントされないのは、生の弁護士を見たこともない庶民の実感。政治家がないのは、その業が普通の人の選ぶまっとうな職業ではないという親の常識=「国民世論」の反映だろう。だが、韓国でも弁護士の数はかつては少なく、政治家の数も地方自治の未発達で多くはない。

日本のこどもの職業像にはテレビの影響は否定できないが、職業を通じて世の中にどう貢献するかという意識を日本の親や社会がもはや持っていないことが映ってはいないか。

日本のこどもの場合、高校生になると、アメリカ、中国、韓国のいずれとも異なり、将来の職業としては会社員が突出するそうだ。あまりに即物的な日本のこどもの職業観は、生の政治の歪み、将来の夢を持ちにくい社会の鏡なのであろう。

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