全国町村会

ニセコ町基本条例の<呪縛>

九州大学大学院法学研究院教授 木佐 茂男(第2628号・平成20年2月4日)

カウントの仕方にもよるが、すでに100程度の市町村で自治基本条例あるいはまちづくり基本条例が制定された。制定の途上・準備中の自治体も多い。自治基本条例の作り方の指南書も出版されている。読むと、ときに「ニセコ町まちづくり基本条例の呪縛」という言葉もある。確かに、国内第1号となった北海道ニセコ町のまちづくり基本条例を参考にしている例が多い。

同条例の制定過程に携わった者の一人として、この条例の内容とその制定過程、制定理念などが参考にされるのは至上の喜びではある。しかし、「呪縛」と言われると少し複雑な気持ちになる。

ニセコ町で当時の逢坂誠二町長は、ニセコで実践した町民参加や情報公開の到達点の文章化・成文化をしようとした。その結果がニセコ町まちづくり基本条例。だからこそ、制定に関与した職員や我々関係者は、制定後に必ず出る「町は条例を作ってからどう変わったのか」という問いに、これは「見えない条例」であり、「やっていることを条例にしただけだから」町はすぐには変わらないはず、と回答しようとした。

同条例施行からほぼ七年経とうとする昨年(2007年)末に、この間の経緯を振り返る対談を同町の管理職と行った。なんと、町は良い方向にいわば自動回転をしている。同町に移住する道内・道外の人たちは同条例を知った上で来ている。役場内では頻繁に住民中心の会合が開かれ、自ら手を挙げて集まった小中の児童生徒は、当然のごとくに、本物の町執行部と真剣勝負の議会を行い、子どもだけの委員会で答申案を出している。町民のネットワークや事業活動は拡大の一途である。その管理職は、まだ課題は残るものの「まちづくりの条例文化」が確実に形成されつつあるという。各家庭は分かりやすく作成された歴年の予算書を保管している。

自治基本条例が本当に機能し出すとすごいことが起きる。「変わらない」はずだった町が、いっそう活性化している。ブックレットでも作って世に紹介したいと思う新年である。

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