全国町村会

民意を反映する選挙制度は?

九州大学大学院法学研究院教授 木佐 茂男 (第2596号・平成19年4月9日)

「極論に過ぎるかもしれませんが、わが国のデモクラシーはほとんど死んでいると思います。」(大森彌『これでよいのか! 地方議会』東京市政調査会。2005年刊。14頁)。

これは、議会の招集権が首長にあることに絡めての発言であるが、「デモクラシーが死んでいる」状態は、この一局面にはとどまらないであろう。日本の女性の国会議員数が世界で99位(2007年)というのも選挙制度の欠陥の帰結である。

自治体首長や議会の選挙制度、議会や議員に対する批判、議会の機能不全を問う声はある。だが、今回の統一地方選挙も選挙制度の根幹を何ら見直すことなく、旧来の制度に依った。戦国時代?の戦争(軍事)用語に溢れた日本型の選挙は、どうも欧米には見あたらない。選挙は、戦争ではないから、もう少しおだやかな言葉で表現され、誰でも容易に立候補できる仕組みにできないのか。

日本のように素人が首長になれる制度も悪くはない。しかし、直感での政策や思いつきの人事などを避ける制度上の工夫が要るだろう。

議会選挙にあっても、欧米では政党主体の選挙が普通なので個人負担はほとんどなく、名簿式比例選挙ということもあって、候補者個人の選挙カーが街頭を走ることもない。「フツー」の人も市民の一種の義務感から地方議員になることも多い。

日本では、優れた議員を選ぼうにも、「この人をこそ」という人が議員になれない。昨秋、中国の天津市で地区選挙投票前日に、候補者である大弁護士事務所のボスがまる1日付き合ってくれた。事前に配付されている投票用紙を見せてもらったら、立候補をしていないが議員になって欲しい人の名前を立候補者数と同じだけ書く欄があった。まだ、この空白欄記載により当選する人は出ないであろうが、先見性のある制度かもしれない。本人が選挙運動を前日でもしていないのも興味深かった。アジアを含めた世界の中で、日本の選挙制度とその運用は孤立しているのではないのか。

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