全国町村会

桜花爛漫の下の憂鬱

九州大学大学院法学研究院教授 木佐 茂男 (第2554号・平成18年3月27日)

今年も、自治体職員にとってうっとうしい人事異動の季節がやってきた。私には全国に自治体職員の知人がいるが、ひと味違った人脈、経験、発想、努力、自主研究などを特徴としている人が多い。しかし、そういう人ほど、組織の中で能力を発揮できず、適所で働いているとは言いがたい。例外はあるが、組織で高く評価され、出世するタイプは、自分の考えを主張せず、人間関係を重視する人が多いように感じる。

地方公務員法には、「勤務成績その他の能力の実証」、「平等取扱の原則」、「競争試験の目的及び方法」、「任用候補者名簿の作成」といった言葉が並ぶが、虚ろなまぼろしである。

日本の自治体職員の昇任や配置転換を決定する勤務評定には、まだ科学的な測定システムがあるとはいえない。結局、従来の年功序列の順番をじっと待つか、あるいは、議員や一部の幹部職員のお好みで、ブラックボックスの中で決定されるといっても過言ではない。職員の人事裁量権を持つはずの首長ですらブラックボックスを覗けない自治体もあるし、評価される本人は、当然に自己情報を知らない。自己の人事処遇に不服を申立てれば、同僚が眉をひそめる。

組織の3大資源はヒト、モノ、カネ。「モノ」と「カネ」は情報公開制度を通じて多少は住民の監視の目が届くが、およそ「ヒト」の有効性、有用性、効率性の客観的基準がない。

ドイツは、戦後早くから勤務評定の本人開示・複写交付、反論権記載も保障していて、もっとも科学的な人事管理を行っている国の一つである。さらに、後進部隊とされていた日本の裁判官人事でも、透明度の高い人事評価が行われるようになった。勤務評定の本人開示も進み、2004年に人事評価の開示を求めた裁判官は全裁判官の約5%、不服を申し出た裁判官も少なくない。果たして、自治体職員にはその勇気があるだろうか。

将来、公務員給与が勤務評定で決められる時代が到来する。自治の土壌さえ培われていない自治体では、イビツな勤務評定の枠組みだけが先行し、物言えずに苦しむ自治体職員が増えるだけではないのだろうか。

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