全国町村会

EU憲法制定と日本の町村

九州大学大学院法学研究院教授 木佐 茂男 (第2485号・平成16年7月5日)

「法」と聞くだけで、堅苦しくて、逃げたくなる人は多いかもしれない。

しかし、その法が、世界でも国内でも大変動期にある。この6月18日、EU25カ国は、大欧州の「憲法」条約を全会一致で採択した。第2部の「人権」の章では、第1条が「人間の尊厳の不可侵」を、第2条が「命の権利」を高らかに宣言し、人権規定だけで54カ条もある。この憲法の影響の大きさは次第に明らかになろう。

方や日本。通常国会が終わり、内閣提出法案127本のうち、120本が成立した。5月1日現在の全法律数は1,825本(総務省法令データベース)であったので、制定・改正数の多さに驚く。重要法案がわずか1日で衆参議院の委員会を通過していたりする。このうち、かなりの法律は自治体行政と関わりがある。成立した有事関連7法律のうち、国民保護法が自治体行政に大きな影響をもつのは当然だが、有事新法である「特定公共施設利用法」など、自治体関係者はどれほど知っているだろうか。

およそマスコミも報道しない自治体業務に関連する諸法律が粛々と制定された。制定後40年余も経って漸く改正された行政事件訴訟法もその1つである。今年3月1日発行の法律専門誌の中で、法改正作業に関与した大学教授が、次期国会のテーマであり要綱案もできていないと発言していたにもかかわらず、3月2日には国会に法案が提出されていた。

改正内容には論ずべきことが多いが、新設の46条は原告側(国民)の訴訟手続に配慮したもので注目に値する。書面で「行政処分」を行う場合には、行政の職員は、取消訴訟の被告とすべき者、処分の名宛人が裁判を起こせる期間、不服審査請求をしなければ裁判が起こせない場合(不服審査前置主義)にはその旨を、被処分者に知らせる義務を負う。確かに、職員がこの教示を怠っても何の罰則も予定していないが、確実に、住民にとっては行政への圧力材料となる。町村には大事な研修材料が生まれた。

国が漂流し、法律を粗製濫造しているような時代にあって、町村という最先端の場でこそ、国際的法感覚を持ち、法律なり条文の質を判断し、原点から「この国の行方」を見据えて欲しい。

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