全国町村会

自治体規模と職員の能力

九州大学大学院法学研究院教授 木佐 茂男(第2440号・平成15年5月26日)

最近、全国でも数十番内に入る大都市の職員Aさんと知り合いになった。彼は、公務員生活20余年。彼は人柄も良く頭も良いし、そこそこの大学の法学部を出て上級試験に合格している。もっとも、彼は最初、市役所受験に失敗した。学生時代、彼よりずっと下だった人が現役で通っているのに、彼には政治的な援護者がいなかったのだ。入庁後も、公務員が嫌がる窓口ルーティンワークに長く携わり、ほとんど市の中核的職場に配属されたことがない。

彼は、補助金、計画、企画、法制、財政など、どの重要な仕事も経験していない。専決規定の意味も知らずにきた。しかし、彼のケースは、この市では特異な例外ではない。縁故人事と気まぐれ人事、大規模ゆえの極度の縦割行政に翻弄され続けた。職場の研修にも一貫性はない。こうした環境で優れた人財を生み出すことは至難のことである。

ところが、町村の職員なら、20年間にもう少し幅広い仕事を体験する。私が長年お世話になっている町を例にとると、職員一人当たりの研修経費は全国平均の10倍程度である。90名余の職員のうち15名程度は地域はもとより全国規模でも講演を行っている。この比率なら、Aさんの組織では千人以上となるはずだが、現実には20名もいるかどうか、というのが庁内雀の話である。

私の持論だが、自治体の規模と職員の能力は無関係なのである。だが、問題のある大規模自治体の職員ほど、そのことに気づいていない。Aさんの勤務する市では、合併先の旧町村出身者の昇進が極端に遅くなる。町村職員を見下しているのだが、現実には逆転しているケースが少なくない。小さい町村の方が危機感もあって、徹底した人財(人材)育成や研修を行い、職員自身も休日に無報酬の研修に自ら積極的に出てくるところがある。

地域性や議会体質も要因であろうが、トップリーダーの姿勢如何で体質改善は可能である。首長が人財育成や正当な人事管理に政治力を発揮しなければ、なかなかの勉強家でプレゼン能力も結構あるAさんは、大規模なるがゆえに芽の出ぬまま、人財から人罪になってゆく。これでは住民との情報共有も住民自治も絵空事でしかない。

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