全国町村会

公企業に独立採算を求める不思議

横浜国立大学経済学部教授 金澤 史男(第2676号・平成21年4月13日)

昨年、道路特定財源の一般化が問題となった時、主要国の現況を調べるなかでガソリン税の一部をバスや公共交通機関の整備に充当しているドイツの事例を知った。自動車は環境問題を引き起こすだけでなく、公共交通の経営を圧迫していることが重視されており、そもそも税は公共性を支えるためにあるという考え方を、そうしたしくみから感じ取ることができた。自動車利用者が負担しているのだから、負担者に還元すべきだとの意識が強い日本に住む者として、目から鱗が落ちる思いであった。

この事例からもう一つ示唆されている のは、ドイツでは公共交通を担う公企業に独立採算を求めず税金の投入を前提としている点である。フランスでも独特の制度がとられている。南聡一郎氏の研究によれば、フランスの都市交通の財源内訳(2004年)において、運賃収入は24%にすぎず、交通負担金40%、地方一般財源21%、国の補助金6%などとなっている(同「サステイナブルな都市交通における計画と財政の統合−フランスとイギリスを例に−」2009年3月、(同「サステイナブルな都市交通における計画と財政の統合−フランスとイギリスを例に−」2009年3月、Webサイトより)。交通負担金とは、当該都市内の企業に外形標準課税する法定目的税のことである。

イギリスでも不採算路線については補助金入札制によって公的資金が投入され ているし、市場原理の権化のように言われるアメリカでも、運賃収入の比率は20〜30%であり、自動車税や売上税が投入されている都市が少なくない。

そもそも公共交通は、民間業者が市場原理に基づいてすべてを整備し経営できる性質のサービスではない。むろん料金収入を徴収することが合理的なので全額税金に依存する必要もない。いわば、その中間領域に属しているのであり、独立採算制の枠のなかに押し込めること自体に無理がある。

日本でも、必要であれば税金を積極的に投入しながら公共交通を再建していくことが急務である。その理念は、低炭素社会の実現、高齢化社会における安心・安全の保障、交通権の確立などの公共性を実現することである。その際、主要国では、自動車利用者や地域内企業への負担を実施していることを参考にすべきであろう。

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