全国町村会

四国遍路1200年

千葉市男女共同参画センター名誉館長・NHK番組キャスター 加賀美 幸子
(第2889号・平成26年8月11日)

「お遍路さん・遍路」という言葉を聞くだけで独特の響きと風景が広がる。弘法大師・空海が自らの修行、そして人々の災難を除くために開いた四国88か所を巡拝すること。 遍路の歴史は今年で1200年にもなる。

かつては家内安全、病気平癒、先祖供養など、信仰のため人々は、1400キロにも及ぶ厳しい道のりを歩き続けた。最近では、ストレス解消、自らに向き合う、健康志向、観光など、その目的は広くなり、 巡り方も、歩くだけでなく、車や自転車・バイクの例も多いという。更に外国人のお遍路さんも多くなり、 この10年で13倍にもなったそうである。「HENRO〜四国を歩く外国人たち」というNHK高松局の番組はその姿を追った。

フランス人の若者は二週間の休みを利用してやってきた。その間仕事を忘れ、ひたすら静かに歩き続ける中で新しい発想が生まれることを願って遍路していた。

アメリカ人の若き女性は、嬉しそうに手甲、脚絆、草鞋、白装束…遍路姿に身を包み、1400キロを歩き始めた。彼女は職場の人間関係に自信を失いかけ、 どう生きればよいか迷っていた時にインターネットで遍路を知った。だれにも邪魔されず一人きりになりたかった。しかし、自国は農地と民家が遠く離れているけれど、ここでは田んぼの中に民家がある。 見ず知らずの人からの何気ないお接待にも出会う。一人になるつもりが、逆に人々の息遣いにふれ、その心に励まされて、新鮮な思いで、最後の88番札所・ 大窪寺まで43日かけて歩きぬいた。「自分ひとりだけで、佳い人生を送るなんてありえないと思った」と語る彼女の顔は美しかった。

伝承とは何かを探るアメリカ人男性。オランダからのカップルは妻の病気克服が目的で、四回目の遍路という。厳しい体調で76日かけて最後まで歩ききることができ結願した。ブラジルからの日系三世の男性は、 日本を訪ねたかった思いを果たせず亡くなった妻の写真とともに遍路する。…今、ひと月に300人近い人たちが海を越えてやってくるという。その言葉に耳をすますと、海の内も外も、 人々の思いと様子は全く変わらないのである。ナレーションしながら、1200年続いている深く広い意味を改めて見つめた番組であった。

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