全国町村会

語り続け・語り残す

千葉市男女共同参画センター名誉館長・NHK番組キャスター 加賀美 幸子
(第2833号・平成25年3月18日)

古典を読んでいると、日本を襲った災害がいかに多かったか改めて知らされる思いである。元暦の大地震について『方丈記』は「山崩れて 川を埋み 海かたぶきて、 陸をひたせり 土さけて水湧きあがり…」と伝える。まさに今回の東北大震災と全く同じ状況だが、『平家物語』『徒然草』『安政見聞録』…その他、古典はその時代の 災害の爪痕を記し続けている。そして、日本人のある種の気質「喉元すぎれば熱さを忘れる」ということの繰り返しを、私たちに警鐘してくれているのである。 しかし、放射能の大きな問題も含め、今回の災害は、このことわざを消さなくてはならない。

3・11から2年。2年の歳月は、様々なことを知らせてくれる。被災地の人々の心の向かい方も変えてきた。口にも出せなかった深い悲しみ、胸にためていた思いを、 凝縮して、短歌という形で語る人々…老若男女…当時の中学生は、今、高校生、「震災を詠む」という企画に多くの作品が寄せられ心打たれた。

「今もまだ 傷跡残る 胸の奥 瓦礫とともに 消えない思い」(菅野七生・高1)「襲いくる 黒い荒波 僕たちに 涙を流す 暇も与えず」(加藤夏海・高1) 「あの時の 不安とともに 積る雪 それを溶かした 家族のぬくもり」(楢山花穂・高1)「失ったものもあるけど「しっかり」と 頬をはじいた 鋭いみぞれ」 (久保田有菜・高1)

そして歳を重ねた方々の確かな言葉は私たちを惹きつける。「九十一の われ 三度目の大津波 ながらえて見し この世の無残」(中村とき) 「仮設から 黒枠などで 出たくない 九十九才が 今日もふんばる」(佐藤武子)「人生の 終点のごと 津波跡 始点と決めて 歩き出した日」(今野梢)

深く明快な言葉で、若い人たちはどこまでも「語り続けて」ほしい。そして人生の先輩は強く「語り残して」ほしい。

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