全国町村会

心の歌

千葉市男女共同参画センター名誉館長・ NHK番組キャスター 加賀美 幸子
(第2759号・平成23年5月16日)

「俳句」や「短歌」の番組を長く担当してきた。その間、「短歌や俳句は大事だと思うけれど、何か近寄りがたい。俳句は短いし情景が解りやすいけれど、短歌の方は特にどうも重く古臭く感じてしまう…」という声をどれほど多く耳にしてきたことだろう。

しかし、5、7、5(7、7)のリズムは日本人の体内に自然に入っているし、短い言葉の中に、心も、世の中も、ありとあらゆることを詠えるという合理性は、誠に現代的であり、つねに「今的」である。だから、人々は、万葉の時代から今にいたるまで、その心を詠い続けてきたのだ。

毎年行われるNHKホールでの「全国短歌大会」、今年も全国各地から寄せられた歌の数は一般の部では二万首を遥かにこえ、その中から60首の特選歌が発表され朗読を担当した。

「地下鉄の サラリーマンの群衆の ひとりくらいは亡霊だろう」四国の香川小百合さんがお住まいの町には地下鉄はないとのことだが、いつも利用している私もそのまま頷ける。

東北の小林真代さん「初めての試合は 小林VS小林 うちの子は負けたほうの小林」母の明るさと優しさに会場は沸いた。

東京の大山園枝さんの短歌「帰るとき われを見送る父母の 影は里山の狸と思う」…どの歌も説明なしに、都会の人ごみ、母の気持ち、故郷の両親の心が直に伝わる。

この「全国短歌大会」は20年以上続いているが、担当した初めのころは、戦争で失った家族を偲ぶ歌もあり、一方で、明日への力を詠いあげる作品も多かった。そして身近な日々の思い…。毎年毎年、時代の風の中で詠われる作品が全国津々浦々から寄せられ、会場皆でその心を共有する。

古臭いどころか、毎回ぐいぐい引き込まれながら私は朗読する。

短歌は時に時事が強く詠まれることがある。時代が、地域が、くらしがそのまま見え、言葉によって立ち上がってくる。

…今後、人々は時代と心をどう歌うであろうか。

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