全国町村会

全国各地の素敵な歌

千葉市女性センター名誉館長・アナウンサー(元NHK) 加賀美 幸子
(第2709号・平成22年2月15日)

今年も恒例の「全国短歌大会」がNHKホールにて行われた。全国各地から約25,000首の応募があり、その中から20人の歌人により60首が選ばれ、特選として当方の朗読でご紹介していく大会である。壇上に並ぶ、作者と作品そして選者の言葉…日本語の響きと心が会場に溢れ、ホールは一体となり豊かな時間を共有しあう20年以上続く大会である。

全国各地の風土と文化の中で詠まれながら、どの歌も、広く誰の心にも伝わってくる力強さで心動かされる。土地の名前を言わなくても、通ずる歌たちなのだが、不思議なことに、歌に添えて作者の住む土地をご紹介すると、その味が又、深くなるのである。

「一町歩二百余枚の山の田を耕して四人の子を育てきぬ」新潟県の木島睦子さん…雪の棚田、父母の大変さが人々の胸にせまりくる。「ベランダに妻のショーツとブラを干すわが衣手に桜花降る」千葉県の塚谷隆治さん…千葉の明るさと、夫婦間に漂う爽やかさ。会場から優しい笑いが起きる。「べっぴんになれよと小鼻つまみいし父よ私は幸せにおり」熊本県の吉田尚子さん…だれもが経験する風景。熊本の父だからよけい面白い。「ふたりかと遠目に見しは人と犬ともに座りて川をみて居り」東京都の石川つるさん…東京という都会。会場はだれもが91歳のつるさんに拍手。みんな思い当たるのである。「衣食住足りてさびしきこの世なり戦前戦後はまぼろしのごと」島根県の櫻尾道子さん…衣食たりて嬉しいのではなく寂しいという思い。短い言葉の中に深く広がる世界。…その他どどの歌も惹かれる。

書かれた言葉が朗読でどう立ち上がってくるか。会場の人々に瞬時に伝わり、作品を共有できるのが朗読。言葉と内容と心が判り易く伝わらなくてはならない。そして短歌に大事な日本語の響きが求められる。それだけに問われる仕事でもある。年に一度の「NHK全国短歌大会」。全国各地から寄せられる歌だからこそ説得力と魅力があるのである。

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