全国町村会

風林火山

千葉市女性センター名誉館長・アナウンサー(元NHK) 加賀美 幸子
(第2622号・平成19年11月26日)

「疾(はや)きこと風の如く、徐(しずか)なること林の如く、侵略すること火の如く、動かざること山の如し」

平成19年のNHK大河ドラマ「風林火山」は、孫子のこの言葉を軍旗に掲げ、乱世を戦い生きる武田晴信(後の信玄)と武田の軍師山本勘助が軸の物語。そして二人の前に立ちはだかる越後の長尾景虎(後の上杉謙信)。戦国時代、最大の激戦・川中島の戦いに至るまでの「夢や愛、憎しみや野望、その底に流れ続ける人間のやさしさや哀しみ、戦国のロマン」が、茶の間のテレビに描かれてきた。一年の大河の流れも、まもなく、河口に近く、その流れは終りを迎えようとしている。

父信虎から疎まれる、あの弱々しくもストイックな青年時代の晴信から、心身に威力をつけ、人間を強烈に滲ませる、甲斐の虎・信玄へ変わり行く姿を変幻自在に演ずる市川亀治郎さん。まだ30歳をほんの少し超えたばかりの若手歌舞伎俳優亀治郎さんのその力には多くの人が「物語」と同時に惹き付けられるという。ナレーションを通して一年を見てきた当方も、その役者力の深さ鮮やかさに驚くばかりである。過日対談の機会があった。

「芝居は相手によって作られるもの。自在でなければならない」と彼は言う。自分ばかりに拘っていたら自分どまり。相手の力を引き入れて大きくなるということであろう。山本勘助の内野聖陽(まさあき)さん、上杉謙信のGackt(ガクト)さん、由布姫の柴本幸(ゆき)さんはじめ、多くの見事な演技者との相乗作用が迫りに迫ってくるドラマ「風林火山」である。さらに「役者は“気”が何より大事。演技は磨けば上達するが、“気”はそういうものではない…」と若々しく語る亀治郎さん。

「自在さ」と「気」のあり方。「気」こそ、その人を、他と違って際立たせてくれるもの。大河の魅力をつくる亀治郎さんの力のありどころを伺いながら、自らの仕事や周りの様子などを改めて考えさせられた対談のひとときであった。

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