全国町村会

声に出したい『稲作小言』

千葉市女性センター館長・アナウンサー(元NHK) 加賀美 幸子
(第2490号・平成16年8月16日)

あるディレクターから連絡があった。「米をテーマにクイズ番組を作ります。その出題と朗読を担当してください」どの作品を朗読するのかと尋ねると「船津伝次平(ふなつでんじべい)という人の…」私は最後まで聞かず、逸る心で「えっ!上州の船津伝次平のこと?」私の反応にディレクターは驚き「伝次平を知っているのですか?

『稲作小言(こごと)』という素晴らしい作品がこごとあるので、国際コメ年でもあり紹介したい」と言う。

上州・群馬県には「上毛かるた」という県の風土と人と歴史を子供たちに伝え続けてきた「いろはかるた」があり、私も縁があって小学生の頃から馴染んできたのである。

「ろ」は「老農船津伝治平」…農業に力を尽くした先人の存在は知っていたが『稲作小言』は始めてであった。声に出すと調子もよく、ぐいぐい惹きつけられる。

「ヤレヤレ皆様しばらくお耳を」拝借しますよと始まる。「…飯(めし)には勿論 酒でも寿しでも 菓子でも味噌でも 御米で作れば 味いよろしく 紙漉く糊にも 布張るのりにも調法致して 無類のものなり 精げる時分に 出でたる粉糠は 牛馬の食料 肥料に要用 沢庵漬けには最も必要 糠味噌漬けにも 是又同様  そのまた茎藁 飢饉の食料 製紙の材料 縄(なわ)・簑(みの)・筵(むしろ)に 俵にかますに 草鞋(わらじ)に脚半に 農家のふき草 垣壁なんどに 添ふるは勿論 焚きてはた その灰 種々に必要 腐敗しますりゃ 肥料に適当 其のほか効用 枚挙に尽きせず …(略)… 上等種類を多分に作りて どしどし輸出しその良き味わい 十分知らしめ 尽力するこそ 農家の職分 皆様励んで勉強しなされ……(大幅に略)」

番組が終るや、小言の内容をもう一度知りたいという声が多く寄せられ、今も続いている。田地を廃して牧草を栽培し牛馬羊豚を飼育して肉食を盛んに…という声に対しての明治22年の著作なのだが、米の効用について、いま改めて聞きたい小言ではないだろうか。

執筆者一覧
 バックナンバー
青山 佳世
阿川 佐和子
今井 義典
梅川 智也
大江 正章
大森 彌
岡崎 昌之
小田切 徳美
加賀美 幸子
金澤 史男
木佐 茂男
木村 尚三郎
草柳 大蔵
榊田 みどり
坂本 誠
生源寺 眞一
竹内 政明
田嶋 義介
玉村 豊男
内貴 滋
西川 治
沼尾 波子
橋立 達夫
松本 克夫
宮口 侗廸
村上 和雄
山本 兼太郎
結城 登美雄