全国町村会

活かそう、経験と知恵

NHK解説主幹 今井 義典(第2602号・平成19年6月4日)

最近よく「2007年問題」という言葉を耳にします。なかでもよく話題になるのが「団塊世代」の大量定年退職の問題です。高度な技術を持つベテラン社員退職後の経営課題、社会保障関係費の増大、巨額の退職金の使い道(あるいは金融資産運用)など、いずれも「マクロ」にとらえた議論が先行していて、この40年日本を支えてきた人たちへのあたたかい眼差しが欠けているようにみえます。実は一足さきに第2の人生に踏み出した先輩たちの中には、前向きにチャレンジしている人たちがいます。「団塊世代」へのエールとして1つの例を紹介しましょう。

東京渋谷に小さなコンサルタント会社があります。メンバーは全員60歳以上、定年退職した商社マンOBの会社です。会社といっても、出勤は週に1、2回、それぞれの趣味や余暇の合間に、打ち合わせと情報交換に寄るだけの「ゆるやか」な組織です。携帯電話とE−メールが中心の、いわゆる「SOHO」(小オフィスや自宅をベースにしたビジネス)です。

もう1つの特徴は全員に海外駐在経験があり、しかもそれぞれ、電子部品、自動車、食品、建設など様々な産業分野の専門知識の持ち主であることです。世界の地域ごとの情報に詳しく、販売戦略やフィージビリティ調査(事業可能性の検証)の専門家もいます。全員の海外勤務年数を合わせると150年、一騎当千のつわもの揃いです。

相談は、日本の中小企業共通の問題である後継者対策、関連企業の海外進出対策や自身の進出計画、海外顧客への販売戦略など幅広い注文を受けています。東京の下町の中小企業の支援が中心ですが、顧客企業にとっては、割安なうえ、きめ細かで「使い勝手」のいいサービスなのが魅力のようです。

メンバーの方々とお話しすると、積み重ねた経験の厚みを感じさせるだけではありません。その経験を「世の中に還元しているんだ」という喜びが、第2の人生の夢をさらに膨らませている、そんな思いが伝わってきます。高齢化社会「日本」にはこんな生き方もあるのです。

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